SGLT2阻害薬は、心血管系の危険因子に焦点を当てた大規模ランダム化比較試験(RCT)により心保護作用を有することが相次いで報告されている。米・Southern Illinois University School of MedicineのMukul Bhattarai氏らは、SGLT2阻害薬の心血管疾患への有効性を評価するため、さまざまな背景を有する心血管疾患の高リスクの糖尿病患者を対象に、質の高い大規模RCT 10件のメタ解析を実施。その結果、SGLT2阻害薬群ではプラセボ群に比べ心血管死や心不全による入院が33%低減されたと、JAMA New Open2022; 5: e2142078)に発表した。サブ解析では、65歳以上の高齢者に比べ65歳未満でリスク低減効果が高いことも示された。

約7万例が対象

 Bhattarai氏らは、2021年1月10日までにGoogle Scholar、PubMed、Web of Science、Cochraneなどのデータベースに登録されたSGLT2阻害薬と心血管系転帰などでキーワード検索しPRISMAに従って選択した結果、Modified Jadad Scoreが8点満点で質の高いプラセボ対照RCT 10件を抽出した。

 10件のRCTの参加者は全例が動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のリスクあるいは心血管系の危険因子を有する7万1,553例で、SGLT2阻害薬群3万9,053例、プラセボ群3万2,500例であった。平均追跡期間は2.3年(0.8~4.2年)で、有効性の主要評価項目として心血管死または心不全による入院、副次評価項目として主要心血管イベント(MACE)、心不全による入院、心血管死、急性心筋梗塞、全死亡が評価された。

 メタ解析では、SGLT2阻害薬投与による有効性の評価項目について評価し、また、主要評価項目について性、年齢、人種・民族でサブグループ解析を行った。

急性心筋梗塞のみ有意差なし

 まず、心血管死または心不全による入院は6,921件で発生し、いずれの発生率もSGLT2阻害薬群がプラセボ群に比べ有意に低く、心血管死または心不全による入院リスクが33%有意に低かった。〔SGLT2阻害薬群3万9,053例中3,165件(8.10%)vs プラセボ群3万2,500例中3,756件(11.56%)、オッズ比0.67、95%CI 0.55~0.80、P<0.001、I2=92%〕。また全死亡率、MACE発生率、心不全による入院または救急外来の受診率は、いずれもSGLT2阻害薬群がプラセボ群に比べ有意に低かった(P<0.01)。一方、急性心筋梗塞発生率に両群で有意差はなかった(P=0.22)。

性、年齢、人種・民族にかかわらずSGLT2阻害薬が有益

 サブグループ解析においては、男女ともにSGLT2阻害薬投与により同等の有益性が得られた。

 年齢を65歳以上と未満に分けても、SGLT2阻害薬は同等のリスク低減を示し、心血管死または心不全による入院の発生率を効果的に抑制した。詳細に解析すると、65歳以上〔9,260例中970例(10.47%)〕に比べ65歳未満〔9,057例中629例(6.94%)〕では発生率がやや低かった。

 さらに、白人とアジア人、黒人、他の人種・民族に分けると、いずれの群でもプラセボ群に比べSGLT2阻害薬群で心血管死または心不全による入院の発生率は低かった。ただ、詳細な解析では、発生率はアジア人、黒人、他の人種・民族では8.75%で、白人の8.77%に対してわずかに低かった。

 これらの所見は、SGLT2阻害薬を新たな治療アプローチとして使用することが、複数の併存疾患する糖尿病患者において性、年齢、人種・民族にかかわらず心血管死あるいは心不全による入院を防ぐ重要な手段となることを示唆するものであった。

長期的な有益性は今後の課題

 Bhattarai氏らは「われわれのメタ解析結果は、SGLT2阻害薬が高リスク糖尿病患者において心血管疾患の罹患率および死亡率を改善するための効果的なクラスの薬剤であることを裏付けるものである。ただ、SGLT2阻害薬の長期的な心血管系への利益を把握するには、今後の長期前向き研究および市販後調査研究が必要である」と述べている。

(宇佐美陽子)