北海道大学病院は1月7日、同院の主導により実施した第Ⅱ相医師主導治験(HUON-003-01試験)の結果に基づき、HER2陽性の根治切除不能な進行・再発唾液腺がんに対する治療薬として抗HER2抗体トラスツズマブ(商品名ハーセプチン)が、同薬の適応判定を補助するコンパニオン診断薬としてベンタナultraViewパスウェー HER2(4B5)およびベンタナDISH HER2キットが、厚生労働省に同時承認されたと発表した。医師主導治験において、治療薬とコンパニオン診断薬が同時開発・同時薬事承認された例は国内初となる(関連記事「HER2陽性唾液腺がんへのトラスツズマブのコンパニオン診断薬が承認」)。

トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法の有効性と安全性を検討

 唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に大別される。大唾液腺は左右3対の耳下腺、顎下腺、舌下腺から成り、ここで生成された唾液は管を通じて口腔内に流入する。一方、小唾液腺は口腔、咽頭に無数に存在し、口腔内に直接唾液を分泌している。

 唾液腺がんは、これら唾液腺組織を構成する細胞から発生したがんを指し、多くは耳下腺がん(6~7割)と顎下腺がん(2~3割)が占め、舌下腺がんおよび小唾液腺がんは極めてまれである。

 唾液腺がんは抗がん薬や放射線による治療効果が得られにくく、標準的な薬物療法が確立されていないため、新規治療薬の開発が切望されている。

 HUON-003-01試験は、HER2陽性の根治切除不能な進行・再発唾液腺がん患者16例を対象に、トラスツズマブ+ドセタキセル併用療法の有効性と安全性を検討した国内初の第Ⅱ相医師主導治験。トラスツズマブは初回8mg/kg(体重)、2回目以降6mg/kg、ドセタキセルは70mg/m2(体表面積)をいずれも3週間間隔で投与し、最大8サイクル継続。主要評価項目は奏効率とした。

個別化医療による治療選択肢提供へ

 検討の結果、解析対象となった15例中9例(60%)に奏効が認められた(95%CI 32.3~83.7%)。

 安全性評価では対象の75.0%に有害事象が認められた。主なものとしては好中球数減少62.5%、貧血56.3%、白血球数減少56.3%、倦怠感37.5%、末梢性浮腫37.5%、低アルブミン血症31.3%、注入に伴う反応25.0%、ALT増加25.0%、胸水25.0%などだった。

 治療を完了できなかったのは16例中1例のみであり、良好な忍容性が認められた。

 今回の試験結果を受け、HER2陽性の根治切除不能な進行・再発唾液腺がんに対するトラスツズマブの適応拡大が承認された。

 なお、HER2蛋白の検出には、免疫組織化学染色法(IHC法)により生体由来の組織または細胞中の抗原を検出する組織検査用腫瘍マーカーキットのベンタナultraViewパスウェーHER2(4B5)を用い、HER2遺伝子増幅度の測定はDISH(Dual Color in situ Hybridization)法により組織または細胞中のHER2遺伝子およびHER2遺伝子が局在する17番染色体のセントロメア(Chr17)をそれぞれ黒と赤のシグナルとして検出するベンタナDISH HER2キットを用いた。

 また、適応拡大に伴いトラスツズマブの唾液腺がん患者に対するコンパニオン診断薬として両検査キットの一部変更承認も取得。医師主導治験において、治療薬とコンパニオン診断薬が同時開発・同時薬事承認されたのは国内初となる。今回の承認によりアンメットニーズが高い唾液腺がんに対し、個別化医療のアプローチによる新たな治療選択肢が追加されることとなった。

(渕本 稔)