新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株に対するワクチンの有効性に関する新たなデータが明らかになった。米・Massachusetts General HospitalのWilfredo F. Garcia-Beltran氏らは、米国の医療従事者および地域住民239人から得られた血清検体を用いてオミクロン株、デルタ株、野生株に対する各種ワクチンの有効性について検討。オミクロン株に対しては、mRNAワクチンの2回目接種完了から3カ月以内の人でも中和抗体価は極めて低かったが、3回目のブースター接種を完了している人では2回目接種完了者と比べて19~27倍高いことが示された。同氏らは「オミクロン株に対するmRNAワクチンのブースター接種の必要性を裏付ける結果」としている。詳細はCell2021年12月23日オンライン版)に発表された。

疑似ウイルスを用いてワクチン3種類の有効性を検証

 世界各国で急速に感染が拡大しつつあるオミクロン株は、これまでに流行した変異株と比べて多くの変異を有し、スパイク蛋白質には最大で36カ所もの変異があることが最近のサーベイランスによって明らかにされている。このうち15カ所は受容体結合部位(receptor binding protein ; RBD)に存在するが、オミクロン株以前に流行した変異株の研究から、RBDの変異はワクチンによって誘導された中和抗体からの逃避を仲介していること、ACE2受容体への親和性を高め感染力の強化につながっていることなどが示唆されており、オミクロン株は免疫から逃避する性質を持つ可能性が高いとみられている。

 そこで、Garcia-Beltran氏らは今回、米国で承認されている2つのmRNAワクチン(ファイザー製のBNT162b2、モデルナ製のmRNA-1273)とアデノウイルスベクターワクチン(J&J製のAd26.COV2.S)についてオミクロン株を含む3種のSARS-CoV-2に対する有効性を検証した。

 研究には、これら3種類のいずれかのワクチン接種(mRNAワクチンは最低2回、Ad26.COV2.Sは最低1回)を完了しているマサチューセッツ州の医療従事者および地域住民239人(18~78歳、中央値38歳、女性63%)を組み入れ、①SARS-CoV-2感染歴がなくワクチン接種完了後3カ月以内の群(recent vax群)、②SARS-CoV-2の感染歴がなくワクチン接種完了から6~12カ月が経過している群(distant vax群)、③SARS-CoV-2感染歴がありワクチン接種完了から6~12カ月が経過している群(distant vax+infection群)、④SARS-CoV-2感染歴がなく過去3カ月以内にmRNAワクチンのブースター接種を済ませている群(booster vax群)ーに分類した。

 次に、ハイスループットSARS-CoV-2疑似ウイルス中和アッセイを用いて、各群の血清検体におけるオミクロン株、デルタ株、野生株のそれぞれの疑似ウイルスに対する中和抗体価を比較検討した。オミクロン株の疑似ウイルスはスパイク蛋白質に34カ所の変異を有する。

2回目接種後3カ月以内の5割超で中和抗体が消失

 その結果、野生株に対する中和抗体価(幾何平均値、以下同)は、mRNAワクチン2種のrecent vax群で高かった(mRNA-1273:1,362IU/mL、BNT162b2:2,402IU/mL、Ad26.COV2.S:42IU/mL)。distant vax群ではいずれのワクチン接種群も中和抗体価が大幅に低下していたが、distant vax+infection群ではAd26.COV2.Sを含めた全てのワクチン接種者で高い中和抗体価が認められた。こうした中、booster vax群ではmRNA-1273で3,862IU/mL、BNT162b2で2,219IU/mL、Ad26.COV2.Sで1,201IU/mLと、最も高い中和抗体価が示された。

 デルタ株に対する中和抗体価に関しては、全てのサブグループにおいて野生株と比べて低く、先行研究と一致した結果が得られた。また、distant vax群のほとんどで中和抗体が検出されなかったが、recent vax群とdistant vax+infection群、booster vax群では中和抗体価の低下度は軽度であった。

 一方、オミクロン株に対しては、mRNAワクチンの2回目接種を完了してから3カ月以内のrecent vax群でも50%超で中和抗体が消失しており、野生株に対する中和抗体価と比べたオミクロン株に対する中和抗体価はmRNA-1273で43倍低く、BNT162b2で122倍低いことが示された。これに対し、distant vax+infection群では、そのほとんどで検出可能なレベルの中和抗体が維持されていたものの、中和抗体価はmRNA-1273で9倍、BNT162b2で12倍、Ad26.COV2.Sで17倍の低下が認められた。しかし、booster vax群では、オミクロン株に対する中和抗体価は野生株に対する中和抗体価と比べても4~6倍の低下にとどまっていた(mRNA-1273:6倍低下、BNT162b2:4倍低下)。

ブースター接種による中和抗体価上昇は野生株、デルタ株を大きく上回る

 さらに、mRNAワクチン2回目接種完了後3カ月以内のrecent vax群とbooster vax群の比較から、2回目接種と比べたブースター接種による中和抗体価の上昇度は野生株やデルタ株では1~9倍であったのに対し、オミクロン株ではmRNA-1273で19倍、BNT162b2で27倍と大幅に上昇していることも確認された。

 これらの結果について、Garcia-Beltran氏らは「mRNAワクチンの2回接種は野生株およびデルタ株に対する中和免疫の誘導には有効であるが、オミクロン株に対する中和応答を誘導するには不十分であることが示された」と説明。また、「今回の研究からmRNAワクチンの3回目の接種によって、オミクロン株に対する強力な交差中和反応が生じることが明らかになった」と述べ、「多くの変異を持つSARS-CoV-2変異株の発生および感染拡大を抑制するための公衆衛生策として、mRNAワクチンの追加接種を迅速かつ広範に導入する必要性が裏付けられた」としている。

(岬りり子)