米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設工事が進む同県名護市で16日、市長選が告示された。「市民の生活向上」を掲げ必勝を期す政府・与党に対し、玉城デニー知事ら「オール沖縄」勢力は移設反対の民意を改めて示そうと躍起だ。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、秋の知事選の前哨戦として両陣営が総力戦を展開する。
 「子育て支援の三つの無償化は今、名護市しかできない大きな事業だ」。岸田政権の支援を受ける現職の渡具知武豊氏は16日の出陣式で、自らの実績を強調した。
 名護市では子ども医療費と学校給食費、保育費が無償化された。渡具知氏が市長に就任した4年前に政府が交付を再開した米軍再編交付金が財源だ。
 選挙戦では前回同様、辺野古移設の賛否は明かさず、地域振興を前面に打ち出す手法を徹底。工事が着々と進む中、陣営関係者は「市民の関心は生活だ。辺野古は争点ではない」と断言する。
 ただ、新型コロナの感染拡大により、自民党の茂木敏充幹事長らの現地入りは、中止を余儀なくされた。政権側との太いパイプをアピールする機会を逸した格好で、同党関係者は「集会は軒並み禁止。非常に難しい選挙だ」と嘆く。
 これに対し、新人の岸本洋平氏は16日の出発式で「亡き父の遺志を胸に取り組む。決して新基地は認めない」と宣言した。父の故建男氏は、名護市長だった1999年に移設受け入れを表明。しかし、15年間の使用期限などの条件が守られず、最後は反対に転じた経緯がある。
 移設反対の動きを主導してきたオール沖縄だが、最近は退潮が目立つ。昨年の衆院選でも、名護市を含む沖縄3区で支持候補が落選。今回、基地問題の「本丸」となる名護市で背水の陣を敷く。
 告示の直前、新型コロナの変異株「オミクロン株」が県内で急拡大した。岸本氏の出発式でマイクを握った玉城氏は、在日米軍の水際対策の甘さを批判。「米軍基地を7割も抱える沖縄の現実だ」と訴えた。
 陣営は基地問題の争点化に全力を挙げるが、移設阻止の道筋は見通せないのも事実。岸本氏を支える県議は「(移設反対の)故翁長雄志前知事も玉城知事も止められない。なぜ岸本氏が止められるのかと市民から思われる」と危機感を示した。 (C)時事通信社