2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の心・腎保護作用については多くの報告がある。しかし、実臨床では心血管(CV)および腎イベントの発生や、予後不良を経験するケースも多い。米・University of TennesseeのCsaba Kovesdy氏らは、SGLT2阻害薬服用中のCV・腎イベント発生や治療中断などの予測因子について検討し、結果をBMC Med2022; 20: 2)に報告した。

DKD合併糖尿病患者6,000例超が対象

 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の効果は血糖降下にとどまらず、心・腎保護などにも及ぶ。一方、同薬開始後1年以内に患者は4分の1が治療を中断したとの報告もある。Kovesdy氏らは、同薬を使用する2型糖尿病患者におけるCV・腎イベント発生や治療中断の予測因子を検討するコホート研究を実施した。

 対象は、全米規模の医療保険データベースOptum Clinformatics Data Mart(CDM)から抽出した、2012年4月1日〜19年6月30日にSGLT2阻害薬による治療を初期に開始した18歳以上の糖尿病性腎臓病(DKD)合併2型糖尿病患者6,389例。データの登録から365日未満やSGLT2阻害薬の処方経験例などは除外した。

 主な患者背景は平均年齢65.5歳、女性47.0%、白人47.9%で、平均HbA1c 9.2%、推算糸球体濾過量(eGFR)によるステージで最多を占めたのはグレード3(2,025例、31.7%)。CVリスクの内訳は低リスクが2,797例、中等度リスクが3,237例、高リスクが355例であった。

CVイベントは心房細動で3倍、腎イベントは開業医・研修医による処方で2.8倍

 Cox比例ハザード回帰モデルにより、CV・腎イベントの発生リスクや治療中断リスクなどについて検討した。その結果、1,000人・年当たりのCVイベントによる入院は26.0件(95%CI 21.6〜30.4件)で、予測因子は年齢〔1歳上昇ごとのハザード比(HR)1.03、95%CI 1.01〜1.05、P=0.01〕、ベースラインの心房細動(HR 2.97、95%CI 1.51〜5.84、P<0.01)、末梢血管疾患(同1.67、1.15〜2.42、P=0.01)、非メラノーマ皮膚がん以外のがん(同1.83、1.14〜2.94、P=0.01)であった。また、ベースラインのα遮断薬、抗血小板薬、ニトログリセリンの使用でもリスクの有意な上昇が示された(順にP=0.02、P=0.03、P=0.02)。

 同様に腎イベントについても検討したところ、1,000人・年当たりの腎イベントによる入院は12.0件(95%CI 9.0〜15.0件)で、予測因子は黒人(HR 2.99、95%CI 1.61〜5.54、P<0.01)、一般開業医または研修医による処方(同2.79、1.66〜4.67、P<0.01)、外来診療の回数(1回増加ごとのHR 1.02、95%CI 1.01〜1.03、P<0.01)であった。心不全、高カリウム血症、うつ病、ループ利尿薬の使用などでもリスクの有意な上昇が認められた(順にP=0.03、P=0.01、P=0.04、P=0.03)。

55%が治療中断

 さらに、治療中断は55.0%で発生し、1,000人・年当たりの治療中断は510.5件(95%CI 492.9〜528.1件)で、予測因子はベースラインのDPP-4阻害薬の使用(HR 1.33、95%CI 1.24〜1.43、P<0.01)であった。一方、GLP-1受容体作動薬、基礎インスリン、GLP-1受容体作動薬+基礎インスリン(BOT)などの使用では治療中断リスクの有意な低下に関連していた。

 以上から、Kovesdy氏らは「われわれの解析により、SGLT2阻害薬を新規に開始したDKD合併2型糖尿病患者において、CV・腎イベントや治療中断が高率で発生している実態が明らかになった。ベースラインのCV高リスク例の他、心房細動や末梢血管疾患、心不全がイベント発生の予測因子であることが示唆された」と結論。その上で、SGLT2阻害薬の治療中断と有害事象の潜在的な関連について、さらなる研究の必要性を訴えている。

松浦庸夫