シンガポール・National University of SingaporeのBenjamin K.J.Tan氏らは、難聴や視力障害と死亡リスクとの関連を調べるため、約120万例が参加した26件の観察研究のシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。その結果、聴覚と視力障害が併存する「二重感覚喪失」があると全死亡リスクが40%、心血管死亡リスクが86%上昇することが分かったと、JAMA Otolaryngol Head Neck Surg2021年12月30日オンライン版)に発表した。難聴のある患者、特に視力障害が併存している場合には、プライマリケアで定期的にフォローアップし、健康状態を評価する必要があるとしている。

死亡リスクとの関連はこれまで不明

 難聴や二重感覚喪失は身体障害をもたらし、加齢に伴う認知症やフレイル(虚弱)などの危険因子であることが知られているが、死亡リスクとの関連は明らかになっていない。

 そこでTan氏らは、PubMed、EMBASE、Cochrane Libraryに2021年6月までに登録された英語論文のうち、18歳以上の男女を対象に難聴または二重感覚喪失と死亡率との関連を検討した文献のシステマチックレビューを実施。抽出した3,220報のうち基準を満たした観察研究の26報(後ろ向き研究14件、前向き研究12件、計121万3,756例)を対象にメタ解析を行った。なお、Newcastle-Ottawaスケールを用いて評価した観察研究のバイアスリスクは、26報中23報で低~中程度だった。

難聴単独では全死亡13%、心血管死亡28%のリスク上昇

 難聴のメタ解析では21件の研究を対象とし、解析の結果、聴力が正常な者と比べて、難聴のある者では統合した全死亡リスクは13%〔ハザード比(HR)1.13、95%CI 1.07~1.19〕、心血管死亡リスクは28%(同1.28、1.10~1.50)いずれも有意に高かった。

 また、二重感覚喪失のメタ解析では10件の研究を対象とし、解析の結果、聴力および視力が正常な者と比べて、二重感覚喪失のある者では、統合した全死亡リスクは40%(HR 1.40、95%CI 1.30~1.51)、心血管死亡リスクは86%(同1.86、1.31~2.65)有意に高かった。

 両解析とも、対象とした研究の多くで年齢、性、BMI、教育レベル、高血圧や糖尿病などの併存症を調整した解析が行われていた。

聴覚レベルと死亡リスクに用量依存的な関係

 聴力については、質問票を用いて自己申告した場合(15件の研究)と聴力検査で客観的に評価した場合(10件の研究)の効果量はほぼ同程度だったが、後者の方が研究の異質性は低かった。

 聴力検査を行った研究を対象に、聴力の重症度で層別してメタ解析した結果、難聴の重症度が高いほど全死亡リスクが高まる傾向が見られた〔軽度(25~40dB):HR 1.14、95%CI 1.07~1.22、中等度~高度(40dB以上):同1.24、1.14~1.35、高度(60~90dB):同4.07、3.71~4.46、聾(profound:90dB以上):同4.22、3.52~5.05〕。聴覚レベルと死亡リスクの間には用量依存的な関係が認められ、聴覚レベルが30dB悪化するごとに全死亡のHRは2倍になった。

難聴と死亡リスクとの関連にはさまざまな要因が影響か

 Tan氏らは、難聴と死亡率が関連するメカニズムについて考察。まず、高血圧や糖尿病、脳卒中、全身性炎症疾患などの併存疾患の存在や、社会経済的状況、婚姻状況の影響を考慮する必要があると指摘している。

 次に、難聴は①不安や抑うつなど精神衛生に悪影響を及ぼし、交感神経の活性化や内皮機能障害、動脈硬化の進展などを介して死亡リスクを高める可能性がある、②認知機能低下や転倒、社会的孤立、身体活動制限などによりフレイルを引き起こす、③交通事故や労働災害に遭遇するリスクが高いことも死亡リスクを高める要因になりうる-といった点について言及している。

 以上を踏まえ、同氏らは「今回のメタ解析は因果関係を結論づけるほど検出力が十分ではなく、聴覚に介入することで死亡リスク抑制につながるか否かは不明だ」としながらも、「難聴と二重感覚喪失は早期死亡の危険因子である可能性がある」と結論。難聴があり、特に視力障害も併存している患者に対しては、プライマリケアで定期的にフォローアップを行い、循環器内科と連携して定期的な健康状態を評価する必要があると付言している。

(小谷明美)