心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーションは、デバイスの選択肢の増加や手技向上などで安全性が高まっていると考えられる一方、米国では近年、合併症発生率や死亡率が高まっているという報告があり(J Am Coll Cardiol 2019; 74: 2254-2264J Cardiovasc Electrophysiol 2018; 29: 715-724)、一致した見解は得られていない。オーストラリア・University of QueenslandのLinh Ngo氏らの研究グループは、同国およびニュージーランドにおけるAFアブレーションの過去10年の推移を調査し、両国では合併症が低下していることをEur Heart J Qual Care Clin Outcomes2022年1月4日オンライン版)に発表した。

施行例は2008年:1,359例→2017年5,115例に増加

 今回の対象は、2008~17年に入院および日帰り入院患者の記録であるAdmitted Patient Collection(APC)(オーストラリア)とNational Minimum Dataset(ニュージーランド)に登録された18歳以上のAFアブレーション施行患者3万7,243例(オーストラリア3万4,199例、ニュージーランド3,044例)。AFに加えて他の不整脈が診断された患者やなんらかのデバイスが埋め込まれた患者などは除外した。

 主要評価項目は、入院中または退院後30日以内に発生したなんらかの手技関連合併症で、①全死亡、②心肺機能障害およびショック、③脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)、④心膜液貯留、⑤出血、⑥血管障害、⑦深部静脈血栓症-などの発生とした。 AFアブレーション施行例は、2008年時の1,359例から2017年時には5,115例と経時的に増加し、両国の成人人口を考慮すると、オーストラリアでは10万人当たり7.9人から24.2人に、ニュージーランドでは2.4人から13.3人に、それぞれ有意に増加していた(P<0.001)。

 主な患者背景の経時的推移を見ると、平均年齢は2007年60.5歳→2017年63.3歳に上昇し、65歳以上の割合が同35.8%→48.9%、女性の割合が27.0%→32.1%と増加していた他、慢性腎臓病(2.2%→4.1%)、糖尿病(6.8%→12.4%、以上P<0.001)、心不全(9.8%→12.4%、P=0.042)の有病率が上昇していた一方で、高血圧の有病率は17.0%→8.1%と低下していた(P<0.001)。

合併症は全体的に減少も、感染症と急性腎障害は増加

 全体のうち、退院後30日以内の手技関連合併症が認められたのは6.21%で、入院中に発生したのは4.83%だった。頻度が高かった合併症として、出血(全例の3.67%)、心膜液貯留(同0.83%)、感染症(同0.44%)が挙げられ、輸血を必要とした出血イベントは17.9%、心膜腔穿刺を要した心膜液貯留は52.4%だった。

 入院中または退院後30日以内の全死亡率は0.11%(41例)と低かった。内訳は、8例が院内死亡で、33例が退院後30日以内に死亡し、入院することなく自宅などで死亡したのは20例だった。

 合併症を個別に見ると、2008年から2017年にかけて心膜液貯留(1.69%→0.70%)、出血(4.49%→2.74%、以上P<0.001)、血管損傷(0.52%→0.16%、P=0.011)、 深部静脈血栓症(0.15→0.10%)の発生率は有意に低下していたが、感染症 (主に肺炎、0.15%→0.57%、以上P=0.011)と急性腎障害(0.15%→0.68%、P<0.001)は有意に上昇していた。死亡率の有意な変化は認められなかった(0.0%→0.16%、P=0.751)。

 経時的な患者背景の変化を調整後の合併症のオッズ比(aOR)は、1年ごとに有意な低下が見られ(aOR 0.96、95%CI 0.94~0.97、P<0.001)、入院中(同0.96、0.95~0.98、P<0.001)および退院後(同0.94、0.91~0.97、P<0.001)の合併症のaORも有意に低下していたが、死亡率のaORに有意差は認められなかった(同0.99、0.88~1.11)。 

 研究グループは「今回の解析では、高血圧を除くと糖尿病や心不全などの併存症の有病率が経時的に上昇していた。2008年の調査開始時と比べて対象が高リスク化していたにもかかわらず、AFアブレーションの合併症の発生率は低下し、死亡率に有意な変化は認められなかった。ただし、急性腎障害や感染症の発生率は有意に高まっており、これらについては改善の余地がある」と述べている。

(編集部)