韓国・Korea University College of MedicineのYun Gi Kim氏らは、うつ病患者約15万例と非うつ病者約488万例の計503万例超を対象に、新規発症の心房細動(AF)のリスクを比較した。その結果、新規発症AFの累積発生率は非うつ病者に比べてうつ病患者で有意に高く、うつ病はAFの新規発症リスクを25.1%増加させたと、JAMA Netw Open2022; 5: e2141772)に発表した。

交感神経活性化やストレスが関連している可能性

 うつ病患者におけるAF発症のリスクは十分に知られていない。うつ病は交感神経の活性化や感情的ストレスと関連しており、それがAFの発症リスクを高めている可能性がある。

 今回、Kim氏らは、韓国国民健康保険サービス(K-NHIS)データベースを用いて、うつ病患者と非うつ病者における新規発症AFの発生率を評価することを目的に、コホート研究を行った。

 対象は、2009年に全国で実施された健康診断を受けた503万1,222例〔平均年齢46.99歳±標準偏差(SD)14.06歳、男性277万1,785例(55.1%)〕で、そのうち、うつ病と診断されたのは14万8,882例(3.0%、うつ病群)、うつ病と診断されなかったのは488万2,340例(97%、非うつ病群)だった。20歳未満、心臓弁の手術歴がある、僧帽弁狭窄症の診断歴がある、2002年1月1日~08年12月31日にAFと診断された者は除外した。

 対象者を2009年1月1日~18年12月に追跡調査し、うつ病群と非うつ病群でAFの新規発症リスクを比較した。データ解析は2020年8月1日~10月31日に行った。

 主要評価項目は、追跡期間中の新規発症AFの累積発生率およびリスクとした。新規発症AFの発生率は、追跡期間1,000人・年当たりに算出されるイベント数と定義した。AFの発生リスクを評価するためにKaplan-Meier分析を行い、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて調整および未調整のハザード比(HR)と95%CIを算出した。

若年や女性ではさらに高リスク

 解析の結果、うつ病群は非うつ病群に比べて高齢(56.7歳 vs. 46.7歳)で、女性の割合が高かった〔9万6,472例(64.8%)vs. 216万2,965例(44.3%)〕。また、うつ病群では高血圧糖尿病、脂質異常症、心不全の有病率も高かった。

 新規発症AFの累積発生率は、非うつ病群に比べてうつ病群で有意に高かった(4.44% vs. 1.92%、P<0.001、ログランク検定)。また、共変量で調整後、非うつ病群に比べてうつ病群ではAFの新規発症リスクが25.1%増加していた(HR 1.25、95%CI 1.22〜1.29、P<0.001)。

 うつ病群のうち、うつ病の再発歴がある患者(5万6,951人)では、うつ病の再発歴がない患者および非うつ病者に比べてAFの新規発症リスクが有意に高かった(HR 1.32、95%CI 1.27〜1.37、P<0.001)。

 サブグループ解析ではAFの新規発症リスクに関して、うつ病と若年、女性との間に有意な相互作用が見られた。20〜39歳のうつ病患者ではAFの新規発症リスクが58.3%増加した(調整後 HR1.58、95%CI 1.24〜2.02)。一方、65歳以上のうつ病患者ではAFの新規発症リスクは16.8%増加した(同1.17、1.13~1.21)。

 うつ病の女性ではAFの新規発症リスクが31.5%(調整後HR 1.32、95%CI 1.27〜1.37)増加したのに対し、うつ病の男性では17.0%(同1.17、CI 1.12〜1.22)増加した。

 以上から、うつ病は新規発症AFの累積発生率およびリスクの有意な上昇と関連することが明らかになった。また、うつ病の再発歴を持つ患者ではさらにAF発症リスクが高く、若年や女性のうつ病患者においてもリスクが高いことが明らかになった。

 Kim氏らは今回の結果について、「うつ病患者、特に若年者と女性におけるAFの適切なスクリーニングの必要性を示唆している」と述べている。

(今手麻衣)