ウイルスコピー数が多く新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の強い感染力を有する"スーパースプレッダー"の特徴について、東京医科歯科大学大学院国際健康推進医学分野教授の藤原武男氏と同大学病院救急救命センターなどの共同研究グループが明らかにしたと発表した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査に基づくウイルスコピー数と基礎疾患との関係を調べた結果、基礎疾患を3つ以上保有している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では基礎疾患がない患者に対しウイルス量が87倍と、スーパースプレッダーになりうることを見いだした。研究の詳細はJ Infect2021年12月30日オンライン版)に発表された。

高い感染力と死亡率もたらす

 多くのウイルスコピー数を有するスーパースプレッダーは高い感染力と死亡率をもたらし、感染を拡大させる。そのため二次感染の拡大防止の観点から早期に同定することが重要となる。スーパースプレッダーの存在は、かつて世界的に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS、2003年流行)や中東呼吸器症候群(MERS、2012年流行)などのコロナウイルス感染例でも確認されたが、その特徴は明らかでなかった。

 そこで研究グループは、2020年3月~21年6月にCOVID-19と診断されて同大病院に入院した中等症~重症のCOVID-19患者379例(年齢中央値59歳、男性67%、女性33%)を対象に、スーパースプレッダーの特徴を探索した。対象は、1回以上のPCR検査を受けていた。1例を除きSARS-CoV-2ワクチンの接種歴がなく、非喫煙歴者が58.3%を占め、現喫煙者が14.8%、過去喫煙者は26.9%だった。

約6割が基礎疾患有し、2割で3疾患が併存

 電子カルテの情報を基に、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、関節リウマチ(RA)、がん、慢性腎臓病(CKD)、脳梗塞、心疾患、肺疾患、アレルギーなどの基礎疾患について調査。その結果、59%がなんらかの基礎疾患を有し、21%は3つ以上併存していた。

 基礎疾患は多い順に、高血圧38.5%(146例)、糖尿病21.6%(82例)、がん18.7%(71例)、脂質異常症18.5%(70例)、アレルギー17.9%(68例)、肺疾患10.8%(41例、喘息、慢性肺疾患を含む)、心疾患9.0%(34例、心筋梗塞、心房細動、慢性心疾患を含む)、高尿酸血症7.7%(29例)、CKD6.6%(25例)、脳卒中5.0%(19例)、RA2.1%(8例)だった。

 入院期間の中央値は6日(範囲0~35日)だった。36.7%(139例)が集中治療室(ICU)に入室し、入室期間の中央値(範囲)は81~84日だった。人工呼吸管理例は26.1%(99例)、体外式膜型人工肺(ECMO)施行例は2.9%(11例)だった。治療薬の使用割合を見ると、多い順にステロイド系抗炎症薬デキサメタゾンが49.9%(189例)、抗ウイルス薬レムデシビルが43.0%(163例)、ファビピラビルが17.9%(68例)などであった。

糖尿病、RA、脳梗塞はスーパースプレッダーのリスクに

 年齢、性、喫煙歴を調整し、基礎疾患の有無とSARS-CoV-2ウイルス量との関係を解析した結果、基礎疾患のないCOVID-19患者に比べ糖尿病がある患者ではウイルスコピー数は17.8倍(95%CI 1.4~223.9倍)、RA患者では1,659.6倍(同1.4~204万1,737.9倍)、脳梗塞患者では234.4倍(同2.2~2万5,704.0倍)と顕著にウイルスコピー数が多かった。また、これら3疾患に限らず、3つ以上の基礎疾患が併存している患者では、ウイルスコピー数が87.1倍(95%CI 5.5~1,380.1倍)だった。

 入院時の血液検査値を解析したところ、血小板数とC反応性蛋白(CRP)低値例ではウイルスコピー数が多いことが判明した。さらにリアルタイムPCR検査を複数回受けた患者の解析では、90%以上が初回または2回目の検査で、最大のウイルスコピー数に達していることも分かった。

 これらの結果を踏まえ、藤原氏は「今回の研究から、SARS-CoV-2感染例におけるスーパースプレッダーの特徴が明らかになり、院内での二次感染拡大を抑制できる可能性が示された」と結論。その上で、「特に、感染を広げる原因となりうるスーパースプレッダーを基礎疾患や入院時の血液検査のデータから特定すれば、臨床医は個室に患者を隔離し院内感染を防ぐための注意喚起を行うなど、感染管理措置を行うことが可能になる」と期待を寄せている。

(小沼紀子)