【ワシントン、ニューヨーク時事】バイデン米大統領の就任以降、米経済は巨額の財政出動などが奏功し、新型コロナウイルス危機から比較的短期間で立ち直った。株価は史上最高値を更新。就業者数は昨年1年間で640万人増と、過去最大の伸びを記録した。一方で、インフレは約40年ぶりの高水準に跳ね上がり、市民の懐を直撃。これが足かせとなり、「景気が回復した」という実感は乏しいままだ。
 米株式相場は、バイデン氏が打ち出した1兆9000億ドル(約220兆円)規模の経済対策や、中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の大規模な金融緩和に支えられ、上昇を続けた。コロナワクチンの普及に伴う経済活動の再開も後押しとなって、代表的な株価指標のダウ工業株30種平均は一時3万6000ドルを突破。バイデン氏の就任から1年間で約14%も値上がりした。
 雇用も求人数の増加を受けて急速に回復。失業率は2021年末に3.9%と、コロナ危機直前の20年2月以来2年弱ぶりに3%台に低下した。大統領経済諮問委員会(CEA)のラウズ委員長は「コロナの流行に直面しているが、労働市場は力強く回復した」と強調する。
 しかし、経済再開に伴う需要の急増に供給が追い付かず、物価は高騰の一途。21年12月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比7.0%の上昇と、1982年6月以来39年6カ月ぶりの高水準に達した。
 物価高は、値上がりの顕著なガソリンや中古車にとどまらず、食品から家賃まで幅広い項目に及ぶ。世論調査でも、インフレは「深刻だ」との回答が8割を超えた。バイデン氏の支持率が低迷している大きな要因の一つが、この記録的な物価高進だと考えられている。
 バージニア州のスーパーマーケットに来店した団体職員の女性(25)は取材に「食品も値上がりしているが、家賃の上昇が最もこたえる」と話し、生活費がかさむ現状を吐露。建設会社経営の男性(48)は「仕事で顧客にコスト増を転嫁できず、利益が減っている」と、先行き不安を訴えた。
 バイデン氏は物価高の抑制を「最優先課題」に位置付けている。戦略石油備蓄の放出や、大手食肉加工会社の寡占規制など、なりふり構わずインフレ対策を講じる。しかし、その効果がどれほどかは不透明だ。
 物価圧力の高まりを受け、FRBは年内3回の利上げを視野に入れる。政府の経済対策も効き目が次第に弱まることから、「株式市場は調整リスクが大きい」(米銀エコノミスト)とみられている。実際に株価が大きく下落するようなことがあれば、11月の中間選挙を控えたバイデン氏に対する逆風は、一段と強まりかねない情勢だ。 (C)時事通信社