糖尿病は認知症の危険因子とされる。金沢大学認知症先制医学講座特任准教授の篠原もえ子氏らは、大規模認知症コホート研究JPSC-ADに参加した全国8地域在住の高齢者1万人超を対象に、糖尿病と認知症発症との関連を検討。その結果、糖尿病の罹患、HbA1c高値、グリコアルブミン(GA)高値はいずれもアルツハイマー病(AD)の発症と有意に関連すること、さらに糖尿病予備軍でもHbA1c値が正常な者に比べADリスクが1.30倍に達することが明らかになったと、J Alzheimers Dis2022; 85: 235-247)に発表した。

糖尿病患者でADリスクが1.46倍に上昇

 糖尿病患者は認知症の発症リスクが高い。その要因として、動脈硬化性病変、微小血管障害、糖毒性、インスリン異常などが提唱されているが、詳細は明らかでない。不健康な食生活、運動不足、肥満、高齢化を背景に、糖尿病患者が増加の一途をたどる中、糖尿病から認知症に至るメカニズムを明らかにすることは重要である。

 そこで篠原氏らは、JPSC-ADに参加した全国8地域(青森県弘前市、岩手県矢巾町、石川県中島町、東京都荒川区、島根県海士町、愛媛県中山町、福岡県久山町、熊本県荒尾市)在住で65歳以上の高齢者1万214人を対象に、糖尿病の有無、HbA1c値、GA値などを調べ、AD、血管性認知症の発症との関連を検討した。

 年齢、性、調査地域、高血圧、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値、BMI、教育レベル、喫煙状況、飲酒状況、うつ症状の有無、運動習慣の有無を調整して多変量解析を行ったところ、糖尿病の罹患とADの発症との有意な関連が示された〔非糖尿病者に対するオッズ比(OR)1.46、95%CI 1.08~1.97、P<0.05〕。

HbA1c 5.7~6.4%でもリスクは1.3倍に

 HbA1c値との関連を検討したところ、高値群(HbA1c 6.5%以上)では正常群(同5.7%未満)に比べADの発症リスクが1.72倍と有意に上昇(OR 1.72、95%CI 1.19~2.49、P<0.05)。しかも、前糖尿病群(HbA1c 5.7~6.4%)においても、同リスクが1.30倍に上昇することが示された(OR 1.30、同1.00~1.68、P<0.05)。

 さらに、GA高値もAD発症との関連が認められた。

 一方、血管性認知症との間には、ADで示されたような関連は認められなかった。

 以上から、篠原氏らは「糖尿病の罹患や高血糖だけでなく、糖尿病予備軍もADの発症と有意に関連することが示された」と結論。「今後は、縦断研究を実施する予定。糖代謝異常と認知機能低下および認知症発症との関連について、より詳細な検討が可能となり、糖尿病患者が認知症に至るメカニズムの解明につながるかもしれない」と期待を寄せている。

(比企野綾子)