米軍普天間飛行場移設問題の行方が絡む沖縄県名護市長選は23日に投開票が迫る。秋の知事選を天王山とする沖縄の「選挙イヤー」初戦。移設阻止を掲げる「オール沖縄」勢力が推す新人と、自民、公明両党が推薦する現職が一騎打ちを演じる。在沖米軍に端を発し、告示を前に広がった新型コロナウイルス感染が「もう一つの基地問題」として争点に浮上している。(敬称略)
 ◇チャンス
 「新型コロナでも国の方ばかり向いて対応が遅れる。この状況を変えなければいけない」。告示日の16日、移設先である名護市辺野古でマイクを握った新人の元市議岸本洋平は、市内でも変異株「オミクロン株」の陽性者が続出した状況を受け、市当局の対応をこう批判した。
 オール沖縄側は昨秋の衆院選で名護を含む沖縄3区で敗北を喫するなど、最近は退潮が目立つ。辺野古沿岸の埋め立ては着々と進み、移設の是非をめぐる論争は盛り上がりを欠く。
 そうした中での感染者急増。日米地位協定が壁となり、水際対策の面で日本側の手が届かない米軍基地が震源との見方が広がり、「コロナと辺野古を結び付けるチャンス」(選対幹部)と飛び付いた形だ。岸本を応援する知事の玉城デニーは19日に名護市内に入り、街頭演説で「地位協定の構造的問題だ」と訴えた。
 しかし、米軍批判は時に行き過ぎる。陣営がインターネット交流サイト(SNS)を通じて「米軍コロナ」とやゆしたのに対し、自公サイドは「ヘイトスピーチだ」と批判。「米軍関係者や家族に対する差別を助長しかねず、不適切だった」と謝罪に追い込まれた。関係者は「辺野古すら争点化し切れていないのに、米軍由来と言っても票にならない。市民感覚をつかめていない」とため息をついた。
 ◇反撃
 「基地から発生する問題にも要請を繰り返す」。現職の渡具知武豊は16日、辺野古地区を訪れ、コロナ対策をめぐり政府に対して「もの申す」姿勢をアピール。集まった20人ばかりの聴衆から拍手を受けた。
 4年前の初当選時と同様、辺野古移設については「国と県の訴訟の推移を見守る」と述べるにとどめ、賛否を明かさない戦術を取る。代わりに前面に出すのは、学校給食費の無償化など米軍再編交付金を財源にした子育て支援策の実績だ。
 「地元首長として無責任だ」といった批判もある。だが、陣営関係者は土砂投入が始まって既に3年以上が経過したことを踏まえ、「辺野古問題は終わった話」と意に介さない。
 ただ、今回の感染拡大は頭痛の種だ。反基地感情が強まれば、選挙戦に影響を及ぼしかねない。そこで陣営は、知事選もにらんで照準を玉城に合わせ、反撃に出た。
 沖縄県内の2回目のワクチン接種率は20日時点で69.2%と全国最下位。この点を捉え、自民党県連関係者は「知事の失政が原因だ」と強調。公明党県本部代表の金城勉は街頭で、地位協定上の問題だとする玉城の主張について「米軍に転嫁すれば自分の責任から逃れられるかのような発言だ」と非難した。 (C)時事通信社