前立腺がんはわが国の高齢男性において頻度の高いがんの1つであり、診療では簡便かつ安全な超音波検査が広く用いられている。一方で、前立腺がんは病理学的な悪性度により進行の程度が大きく異なるため、早期かつ非侵襲的な悪性度の判別やスクリーニングが求められている。日本医科大学泌尿器科講師の赤塚純氏らは、人工知能(AI)を用いた超音波画像診断により、前立腺特異抗原(PSA)検査と比べて有意に高精度に高悪性度のがんを検出できたことをSci Rep2022; 12: 860)で報告した。

AIで691例2,676枚の超音波画像と臨床データを解析

 赤塚氏らは、2017年11月〜20年6月に日本医科大学病院で超音波ガイド下前立腺生検を実施した772例のうち、691例2,676枚の超音波画像と臨床データを用いて、ディープラーニング(深層学習)の手法による高悪性度前立腺がんの検出について検証。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)にはXceptionを用いた。

 691例中532例で経直腸的な超音波ガイド下生検を実施し、159例ではMRI-超音波融合画像ガイド下生検が行われた。590例2,299画像がトレーニングセット、101例377画像が検証セットに割り付けられた。前立腺がん症例は436例、非がん症例は255例だった。

 年齢中央値は71歳(四分位範囲65〜76歳)で、前立腺がん症例は非がん症例より有意に高齢だった。PSA値の中央値は8.3ng/mL(同5.8〜14.0ng/mL)で、前立腺がん症例は非がん症例より有意に高値だった。前立腺体積(TPV)の中央値は35.0cm3(同25.8〜50.6cm3)で、前立腺がん症例は非がん症例より有意に小さかった。Gleasonスコアは6が47例、7が215例、8が79例、9が94例、10が1例で、前立腺がん症例では8以上(高悪性度)が39.9%を占めた。

画像診断と臨床データの組み合わせで高悪性度がんの診断能が向上

 深層学習によって事前分析された超音波画像データにサポートベクターマシンを適用した結果、受信者動作特性(ROC)曲線解析による高悪性度がんの診断精度〔曲線下面積(AUC)〕は0.816(95%CI 0.725〜0.908)だった。さらに、TPV、PSA密度、年齢、PSA値を組み合わせた統合データを用いるとAUCは0.835(95%CI 0.753〜0.916)で、これは臨床データ(年齢、PSA値)による診断のAUC 0.691(95%CI 0.582〜0.801)と比べて有意に診断能が高かった()。

図. 高悪性度前立腺がんの診断能

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Sci Rep 2022年1月18日オンライン版)

 また、MRIの実施に基づく選択バイアスを排除するため、超音波ガイド下のみの生検を実施した532例を対象に同様の検討を行ったが、やはり診断能は統合データで良好だった。

 これらの結果から、赤塚氏らは「CNNは画像解析と相性がよく、深層学習は画像診断において良好な成果を収めており、臨床データなどを統合することで精度はさらに高まる。医療AIの実用化に向けて検討を進める予定である」と結論している。

(安部重範)

  • 分類や回帰に用いられる機械学習の手法の1つ