65歳以上の米国人540万人の調査データを用いた研究から、2008~17年に深刻な認知機能障害の有病率が大幅に低下し、低下率は男性の13%に対して女性では23%と大きかったことが明らかになった。カナダ・University of TorontoのEsme Fuller-Thomson氏らがJ Alzheimers Dis2022; 85: 141-151)に発表した。

集中力や記憶力などの低下の有無に基づき評価

 これまで、欧米各国で認知症の有病率が過去数十年の間に低下したことが多くの研究で示されている。しかし、有病率の低下に性差や年齢層による違いはあるのか、また世代間に見られる教育歴の差が影響しているのかどうかは明らかでない。

 そこで、Fuller-Thomson氏らは今回、米国の65歳以上の地域住民および施設入居者計540万人の調査データを用いて、2008~17年における深刻な認知機能障害の有病率の経時的変化に性差や年齢差はあるのか、さらに世代間の教育歴の差が影響しているのかどうかについて検討した。

 なお、深刻な認知機能障害の有無は「身体的、精神的、情動的な問題が原因で集中力や記憶力、判断力の深刻な低下が見られるかどうか」との質問に対する回答に基づき判定した。

世代間の教育歴の差が寄与

 検討の結果、米国の65歳以上における深刻な認知機能障害の有病率は、2008年の12.2%から17年には10.0%に低下していた。また、2008~17年で有病率に変化がなかったと仮定すると、2017年の時点で深刻な認知機能障害を抱える人の数は113万人多かったと推定された。さらに、2008~17年における深刻な認知機能障害の有病率の低下度は、男性の13%に対して女性では23%と大きかった。

 この他、2008~17年に認められた深刻な認知機能障害の有病率の低下の60%は、世代間の教育歴の差によって説明できることが示された。なお、社会の高学歴化が進み、以前に比べて若い世代で教育機会が広がっており、先行研究では学校教育を受けた年数が増えるごとに認知症の発症リスクが低下することが示されている。

 共同研究者で同大学のKatherine M. Ahlin氏は「学歴の高さは収入や生産性、経済といった面で短期的なベネフィットをもたらすことが明らかにされているが、後年の認知機能に与える長期的なベネフィットも大きいことが今回の研究で示唆された。どの世代にも質が高く無理のない費用で受けられる教育へのアクセスを確保することの重要性を示した研究結果だといえる」と述べている。

 ただし、研究グループは「世代間の教育歴の差の他にも、栄養状態の改善や喫煙率の低下などの要因が深刻な認知機能障害の有病率の低下に寄与した可能性がある」として、今後さらなる研究で他の要因についても検討する必要があると述べている。

(岬りり子)