新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの2回接種は、感染急性期以降も倦怠感や頭痛などの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症状が遷延するLong COVIDの大幅な減少に関連することが、イスラエルの横断研究で示された。同国・Bar-Ilan UniversityのPaul Kuodiらが、2020年3月~21年11月にSARS-CoV-2の検査を受けた成人患者を対象とした質問調査の結果を、査読前論文公開サイトmedRxiv2022年1月5日オンライン版)に発表した(関連記事「急増するコロナ後遺症の実態」「コロナ後遺症"long covid"をレビュー」)。

PCR検査受診3,000例超のデータ解析

 SARS-CoV-2感染の急性期を過ぎても数週間~数カ月間回復しないLong COVID(COVID-19後遺症)は、新たな健康問題となっているが、十分に解明されていない。また、Long COVIDに対するSARS-CoV-2ワクチン接種の影響はほとんど知られていない。

 イスラエルでは、2022年1月までに全人口の約63.6%がSARS-CoV-2ワクチン(主にファイザー製トジナメラン)を2回以上接種、45.6%は3回接種した。今回の研究では、ワクチン接種がCOVID-19罹患後の自己申告による遷延症状の頻度に関連するかどうかを調査した。

 2020年3月~21年11月に、イスラエル北部の公立病院3施設でSARS-CoV-2のPCR検査を受けた18歳以上の患者を対象に、ベースラインの社会人口統計学的因子や健康状態、COVID-19急性期の症状、SARS-CoV-2検査結果、ワクチン接種状況、現在の症状などに関するオンライン質問調査への参加を依頼した。二項回帰分析を用いて、参加者が自己申告した感染急性期後の症状の頻度を、ワクチン接種者とワクチン非接種者で比較。またLong COVIDの一般的な症状はCOVID-19に特異的でないため、感染したワクチン接種者が申告した遷延症状の頻度を非感染者と比較した。

追跡期間と無症候性を調整後も保護効果示唆

 有効回答が得られた感染者951例と非感染者2,437例のデータを解析した。感染者のワクチン接種状況は、1回接種が340例(36%)、2回接種(ごく少数の3回接種例を含む)が294例(31%)、非接種が317例(33%)。COVID-19診断時に症候性と回答した割合は感染者全体で67%、ワクチン非接種群の69%に対し、1回接種群は74%、2回接種群では57%だった(P<0.05)。

 年齢は、ワクチン1回および2回接種群に比べて非接種群で低かった(52歳および44歳 vs 39歳、P<0.001)。症状発現から質問票への回答までの追跡期間中央値は、2回接種群よりも非接種群で長かった(4カ月 vs. 8カ月、P<0.05)。感染者951例中85例(9%)が入院したが、入院頻度に3群間で差がなかった。

 951例中337例(35%)は、追跡期間中に当初のCOVID-19症状から完全に回復していないと回答した。遷延症状は、倦怠感が22%と最も多く、次いで頭痛が20%、腕や脚の脱力が13%、持続筋肉痛が10%など。追跡期間とベースラインの無症候性を調整後も、ワクチン非接種群に比べて、2回接種群ではこれらの遷延症状のリスクがそれぞれ64%〔リスク比(RR)0.36、95%CI 0.19~0.70〕、54%(同0.46、0.26~0.83)、57%(同 0.43、0.20~0.94)、68%(同0.32、0.11~0.88)低下した。また、ワクチンを2回接種した感染者では、非感染者に比べてこれらの症状のリスクがいずれも上昇しなかった。

 なお未調整の年齢層別解析では、60歳以上においてワクチン非接種群に比べて2回接種群で症状が完全に回復しやすい可能性が示されたが(RR 1.68、95%CI 1.18~2.40)、調整後の解析では有意差が消失(同1.68、0.80~3.53)。Kuodi氏らは「検出力の喪失が原因と考えられる」と述べている。

長期転帰の客観的な評価研究が必要

 以上を踏まえ、Kuodi氏らは「SARS-CoV-2ワクチンの2回接種は、COVID-19の最も一般的な遷延症状の大幅な減少と関連していた。今回の結果は、mRNAワクチン、少なくともトジナメランが重症化や死亡の予防に加えて、SARS-CoV-2感染後の症状遷延予防に重要な役割を果たす可能性が示された。得られた知見は、臨床現場でCOVID-19患者の長期的転帰を客観的に評価する研究によって補完されるべきだ」と結論している。

 同氏らは「Long COVIDに対するワクチン接種効果は、さらに研究を必要とする。入院を申告した患者は9%(951例中85例)にすぎず、今回のコホートはCOVID-19軽症例の転帰を反映しており、急性期により重症で入院した患者には結果を一般化できない」と付言している。

(坂田真子)