日本医療安全調査機構は1月17日、薬剤の誤投与による死亡事例を分析しまとめた『医療事故再発防止に向けた提言 第15号』(以下、提言)を公式サイトに掲載した。誤投与による死亡の報告があった36例中17例が医師の処方工程で誤投与が発生。専門外の医師が処方するなど、処方に不慣れな状況で発生していた実態が明らかになった。

8項目を提言

 提言は、2015年10月に開始された医療事故調査制度に基づき、日本医療安全調査機構の医療事故調査・支援センターに報告された死亡事例を分析し、同様の死亡事例を回避することを目的に、再発防止策としてまとめられている。

 今回、院内調査が終了し、2015~20年9月に医療事故調査・支援センターに院内調査結果が報告された1,539件のうち、薬剤の誤投与による死亡事例36例を取り扱った。誤投与の特徴としては確認不足が35例と大半を占め、投与工程では処方時が最多〔17例、以下、投与時16例、調剤時2例)〕、高リスク薬による誤投与(29例)などが挙げられ、再発防止策として8項目が提言された。

照合型チェックの実施を

 投与工程の確認不足については、16例が禁忌薬の処方、用法・用量、休薬期間の誤りによるものだった。18例は薬剤名や規格、用法・用量、患者名、輸液ポンプの流量設定などの確認が不十分であった。

 そこで、処方から投与までの工程において、患者の薬剤適応を判断する「妥当性チェック」と薬剤名や患者名などを突き合わせる「照合型チェック」を行うことを挙げた(提言1)。

 また、医療従事者に当該薬剤の使用経験が少なく、不慣れな薬剤を取り扱ったため誤投与に至ったのは12例報告された。12例中5例が夜間・休日に処方されており、うち2例は日中のみ相談窓口を設けていた医療機関だった。そのため、医療機関は薬剤情報を容易に調べられる環境を整え、医療従事者は不慣れな薬剤を使用する際、薬剤情報を活用し薬剤を理解した上で使用するとした(提言3)。

 過量投与が報告されたのは20例で、内訳はリドカイン、ジゴキシン、ボスミンなどの循環器系薬が8例、医療用麻薬が4例、糖尿病治療薬が4例、抗悪性腫瘍薬が2例、免疫抑制薬および抗痙攣薬が各1例だった。

 このような高リスク薬や降圧薬が過量投与された直後は、ホメオスタシスの代償機能により一見バイタルサインが正常に維持されているように見えることがある。今回、高リスク薬や降圧薬の過量投与は薬物中毒と捉え、バイタルサインや検査所見などに変化がなくても直ちに患者の監視を開始し、薬物中毒の相談窓口や専門医に相談するとした(提言7)。

繰り返されるインスリンの誤投与に2つの提言

 これまで繰り返し警鐘されているインスリン誤投与に関しては、特に注意喚起を要するため、別途提言を設けた。

 今回、死亡報告があったのは4例で、全例がインスリンバイアル製剤を使用した持続点滴だった。死亡事例は、投与量の換算違いによる過量投与だけでなく過少投与でも発生していた。また、2例はインスリン専用注射器ではなく一般の注射器を使用していた。

 そのため、インスリンバイアル製剤を使用する場合、医師はインスリン専用注射器を使用することを前提に用量は単位を用いる(提言8)。また看護師などの投与者は、インスリン専用注射器で量り取れない用量を指示された場合は指示間違いを疑い、医師に確認する防止策を挙げた。

 さらに、インスリンバイアル製剤からインスリンを量り取る際は、必ずインスリン専用注射器を使用し、他の注射器は使用しないとした(提言9 )。

(田上玲子)