腰痛人口は多く、経済的損失も少なくない。中国・Shanghai University of SportのMeng-Si Peng氏らは、慢性腰痛患者を対象に水中運動療法と物理療法の有効性および安全性を比較する単盲検ランダム化比較試験を実施。その結果、3カ月間の水中運動療法は物理療法に比べ長期的に有効かつ安全であることが示されたと、JAMA Netw Open2022; 5: e2142069)に発表した。

治療開始時、3、6、12カ月後にRMDQ、NRSで評価

 腰痛の生涯有病率は84%、慢性腰痛の生涯有病率は23%とされている。診療ガイドラインでは運動療法と物理療法が推奨され、慢性腰痛の治療ではしばしば水中運動療法が行われる。しかし、水中運動療法の長期的な有効性は明らかにされていない。

 そこでPeng氏らは、慢性腰痛患者に対する3カ月間の水中運動療法と物理療法の有効性および安全性を長期的に比較検討した。対象は、18~65歳の慢性腰痛患者113例(男性54例、女性59例、平均年齢31.0±11.5歳)。60分×週2回の水中運動療法(水中運動療法群56例)または経皮的電気神経刺激療法+赤外線療法(物理療法群57例)を3カ月継続する2群にランダムに割り付けた。

 主要評価項目は、治療開始時、3、6、12カ月後にRoland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)で評価した腰痛による日常生活の障害度、副次評価項目は、治療開始時、3、6、12カ月後にnumeric rating scale(NRS)で評価した痛みの程度などとした。12カ月の追跡を完了したのは98例だった。

12カ月後も日常生活の障害度、痛みが有意に改善

 性、年齢、BMI、身体活動、腰痛の持続期間、NRSスコア、薬物治療、喫煙歴を調整した2-way ANOVAで解析。その結果、物理療法群に対する水中運動療法群のRMDQスコアの平均群間差は、治療開始3カ月後で-1.77ポイント(95%CI -3.02~-0.51ポイント、P=0.006)、6カ月後で-2.42ポイント(同-4.13~-0.70ポイント、P=0.006)、12カ月後で-3.61ポイント(同-5.63~-1.58ポイント、P=0.001)と、いずれも有意な改善が示された。各群と各時点には有意な交互作用が認められた(P<0.001)。

 治療開始12カ月時点でNRSスコアが2ポイント以上低下した患者の割合は、物理療法群と比べ水中運動療法群で有意に多かった〔最も激しい痛み:12例(21.05%)vs. 30例(53.57%)、オッズ比(OR)4.24、95%CI 1.93~9.33、P<0.001、現在の痛み:10例(17.54%)vs. 22例(39.29%)、同3.04、1.28~7.25、P<0.010〕。また、RMDQスコアが5ポイント以上低下したのは、物理療法群の4例(7.02%)に対し水中運動療法群では26例(46.43%)と有意に多かった(OR 11.48、95%CI 3.66~36.05、P<0.001)。

 治療によって生じた腰痛、その他の痛みは、物理療法群で2例(3.5%)、水中運動療法群で1例(1.8%)だった。

 以上から、Peng氏らは「慢性腰痛患者に対する水中運動療法は安全かつ有効で、長期的な効果も望める」と結論。さらに「今回の知見により、物理療法のような受け身の治療ではなく、患者自身が能動的に体を動かす水中運動が治療の選択肢になるかもしれない」と付言している。

(比企野綾子)