腸内細菌叢は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果に影響を及ぼすことが先行研究で示されている。こうした中、米・University of Texas MD Anderson Cancer CenterのChristine N. Spencer氏らは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療を受けている悪性黒色腫患者のうち食物繊維の摂取量が多い者では、少ない者と比べて無増悪生存(PFS)が長かったとする観察研究の結果をScience2021; 374: 1632-1640)に発表した。

5g増加ごとに病勢進行・死亡リスクが約30%低下

 これまで、腸内細菌叢がICIの治療に影響を及ぼすことが複数の集団および前臨床モデルにおいて示されている。また、腸内細菌叢の構成には摂取した食物や薬剤などさまざまな環境要因が関与していることも明らかにされているが、食物繊維や市販されているプロバイオティクスの摂取とがん免疫療法の効果との関連については十分に検討されていなかった。そこでSpencer氏らは今回、悪性黒色腫患者438例を対象に腸内細菌叢と食習慣、プロバイオティクスサプリメントの使用との関係について検討するとともに、マウスを用いた前臨床研究を実施した。

 438例中321例は転移性悪性黒色腫で全身治療を受けていた。そのうち放射線画像検査により治療に対する反応が評価できた293例を、奏効群〔完全奏効(CR)または部分奏効(PR)あるいは6カ月以上の病勢安定(SD)、193例〕と非奏効群〔6カ月未満のSDまたは進行(PD)、100例〕に分類した。なお、全身治療を受けた患者の87%はICI(主にPD-1阻害薬)による治療を受けていた。158例がプロバイオティクスの使用の有無に関する項目を含む生活習慣の調査に回答し、128例が食物繊維の摂取量を含む食習慣の調査に回答していた。

 解析の結果、PFSは食物繊維の摂取量が少ない(1日20g未満)群の17カ月に対し、食物繊維の摂取量が多い(1日20g以上)群では23カ月と長かった〔ハザード比(HR)0.59、95%CI 0.33~1.04、P=0.07〕。また、食物繊維の摂取量が5g増加するごとにPDまたは死亡のリスクは約30%低下していた(同0.71、0.52~0.98、P=0.04)。

低食物繊維食とプロバイオティクス投与で抗腫瘍免疫応答が低下

 さらに、ICIが奏効した患者の割合は、食物繊維の摂取量が少なくプロバイオティクスのサプリメントを使用していた群の59%に対し、食物繊維の摂取量が多くプロバイオティクスのサプリメントは使用していなかった群では82%と高かった(オッズ比2.94、95%CI 0.87~9.94、P=0.08)。食物繊維を多く摂取することでICI投与による最も大きなベネフィットが得られるのは、プロバイオティクスのサプリメントを使用していない患者であることも示された。

 この他、悪性黒色腫モデルマウスに高食物繊維食または低食物繊維食、プロバイオティクスを与える実験においても、低食物繊維食およびプロバイオティクスの摂取は腸内細菌叢の調節に関与し、抗腫瘍免疫応答の低下をもたらすことが示された。

 Spencer氏らは「ICIによる治療を受けている患者では、食物繊維の摂取量とPD、死亡リスクが関連すること、プロバイオティクスサプリメントの使用により抗腫瘍免疫応答が低下することが示唆された。食習慣とプロバイオティクスサプリメントの使用に注意を払い、がんのアウトカムを向上させるにはこれらの因子をより慎重に評価すべき」との見解を示している。

(岬りり子)