岸田文雄首相が新型コロナウイルスワクチンの3回目接種の遅れに危機感を強めている。変異株「オミクロン株」の感染拡大と結び付けられれば、政府への不信感が高まりかねないためだ。野党は「先手」をうたってきた首相の指導力に疑問を呈している。
 「きのうから1万回しか増えていないじゃないか」。首相は今月中旬、3回目接種の状況報告を受けるとこうつぶやき、焦りの色を濃くした。政府が月内に計画する3回目接種の対象は1470万人。だが、27日現在で済ませたのは約316万人と約21%にとどまる。
 接種が進まない理由の一つに、2回目までと異なるワクチンを3回目に活用する「異種混合接種」の安全性を不安視する国民が尻込みしていることがある。
 政府は接種率の向上を図るため、米ファイザー製に加え、米モデルナ製の接種を推奨。首相も自ら「1、2回目はファイザー社を打ったが、3回目はモデルナ社を打つ」とアピールした。だが、首相周辺は「高齢者を中心にモデルナ接種への警戒が強い」と声を落とす。
 もう一つは、原則8カ月としていた2回目と3回目の接種間隔について政府は短縮を打ち出したが、これに自治体の対応が追い付いていないことがある。自治体ごとの大規模接種会場の設置や接種券の発送の遅れは各地で目立つ。ある県知事は「接種促進には大いに賛同するが、供給が不可欠」と指摘する。
 首相は27日のBS番組で「自治体の97%が2月末までに希望する高齢者への接種を終えると見込んでいる」と強調したものの、3回目接種がスムーズに行われる見通しは立っていない。
 野党は攻勢を強める。共産党の志位和夫委員長は27日、自身のツイッターで「ブースター接種の遅れは、岸田政権が何の科学的根拠もなく『2回目接種後8カ月以上』を『原則』にしたため、自治体の準備が追い付かなかった結果だ」と批判した。
 立憲民主党の大串博志氏も24日の衆院予算委員会で、接種加速へ自治体に号令をかけた菅義偉前首相と比べて「岸田首相には一生懸命さが見えない」と声を荒らげた。
 専門家の間では感染拡大を抑えられるか、緊急事態宣言に至るかはここ数週間がヤマ場との見方が広がる。今後の状況によっては、首相への風当たりが強まることも予想される。 (C)時事通信社