新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬である抗体医薬や抗ウイルス薬のウイルス増殖抑制効果を培養細胞を用いて検討した結果、抗ウイルス薬レムデシビル、モルヌピラビルはオミクロン株の増殖を抑制することが示された、と東京大学医科学研究所ウイルス感染部門特任教授の河岡義裕氏らの研究グループが発表した。一部の抗体医薬は有効ではない可能性も示された。結果の詳細は、N Eng J Med(2022年1月26日オンライン版)に報告された。これまで、オミクロン株に対してCOVID-19治療薬が有効か否かは明らかでなかったことから、「今回の知見は医療現場における適切な治療薬の選択に役立つ」としている。

抗体医薬ソトロビマブは中和活性を維持も、デルタ株より低下

 研究では、SARS-CoV-2の従来株(武漢型株)や変異株(アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株)に感染させた培養細胞を用いて、各薬剤の感染・増殖阻害効果を検証、比較した。対象薬剤は、bamlanivimab/etesevimab(国内未承認)、カシリビマブ/イムデビマブ(商品名ロナプリーブ)、tixagevimab/cilgavimab(国内開発中、AZD7442)、ソトロビマブ(商品名ゼビュディ)〕などの抗体医薬、レムデシビル、モルヌピラビルなどの抗ウイルス薬。

 解析の結果、オミクロン株に対する中和活性はbamlanivimab/etesevimabおよびカシリビマブ/イムデビマブでは著しく低かった一方で、tixagevimab/cilgavimabおよびソトロビマブは中和活性を維持していた。ウイルスを中和するのに必要な抗体濃度(±標準偏差)を見ると、bamlanivimab/etesevimabおよびカシリビマブ/イムデビマブはいずれも1万ng/mL以上、tixagevimab/cilgavimabは255.86±45.31ng/mL、ソトロビマブは373.47±159.49ng/mLだった。

 ただし、いずれの薬剤もデルタ株よりオミクロン株に対する活性が低いことが判明した。デルタ株のウイルスを中和するのに必要な抗体濃度は、bamlanivimab/etesevimabは10.28±3.33ng/mL、カシリビマブ/イムデビマブは1.91±0.79ng/mL、tixagevimab/cilgavimabは5.50±2.75ng/mL、ソトロビマブは111.43±58.22ng/mLだった。オミクロン株への有効性が期待されているソトロビマブでも、従来株に対し13.7倍の活性の低下が見られた。

レムデシビル、モルヌピラビルの効果はデルタ株と類似

 また2種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル)のオミクロン株に対するウイルス増殖阻害濃度についても検討。その結果、それぞれ1.28±0.42μM、0.43±0.08μMと、いずれも増殖抑制が確認された。効果はデルタ株(レムデシビル:1.12±0.20μM、モルヌピラビル:0.83±0.41μM)および従来株(武漢型株)と類似していた(同1.04±0.32μM、0.51±0.14μM)。河岡氏は「2つの抗ウイルス薬は、オミクロン株感染者の治療に有効である可能性が示唆された」と述べている。

 以上を踏まえ、同氏は「今回の結果は、オミクロン株に対し複数の抗体医薬および2種類の抗ウイルス薬が有効であることを示した。ただし、一部の抗体医薬は有効でない可能性がある」と結論。その上で、「これらの治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するのかどうかについて、COVID-19の動物モデルを用いて、引き続き検証する予定」としている。

(小沼紀子)