中国・Guangdong Provincial People's HospitalのZhuoting Zhu氏らは、ディープラーニング(深層学習)を用いて網膜の老化度(網膜年齢)を判定するツールを開発。同ツールによる検討で、暦年齢と網膜年齢との差が1歳増加するごとに全死亡リスクが2%上昇することを明らかにした。一方で、心血管死およびがん死との関連は見られなかった。詳細はBr J Ophthalmol2022年1月18日オンライン版)に掲載された。

深層学習による網膜年齢と暦年齢に強い相関

 暦年齢が同じでも健康状態には大きな個人差がある。生物学的年齢の方が健康リスクをより正確に把握できるため、これまでに、細胞年齢、分子年齢、神経年齢、顔年齢など、さまざまな生物学的年齢指標が提唱されてきたが、侵襲性やコスト・時間、さらには倫理面・プライバシーの問題もあり、有用性は限定的であった。

 網膜は重要臓器と発生学的起源が似ており、最近の研究で、網膜血管の異常により全身の循環障害を、網膜神経の異常により神経変性疾患を予測できることが報告されている。眼底画像で生物学的年齢を判定できれば、安価で迅速かつ非侵襲的な健康リスク予測ツールとして活用できる可能性がある。

 Zhu氏らはまず、英国バイオバンクにある中高年の眼底画像データから4万6,969例、約8万点の画像を抽出し、このうち比較的健康な1万1,052例における1万9,200点の画像を、網膜年齢判定を行う深層学習モデルの訓練および検証に用いた。

 深層学習に用いた1万1,052例の平均年齢は52.6±7.97歳、女性比率は53.7%だった。

 深層学習モデルで判定した網膜年齢と暦年齢の間には強い相関が認められた(r=0.81、P<0.001、平均絶対誤差3.55年)。

心血管疾患・がんを除く死亡リスクは3%上昇

 次にZhu氏らは、残る3万5,917例のうち死亡データが入手できた3万5,913例の画像を網膜年齢判定深層学習モデルに適用して、「網膜年齢-暦年齢」で定義される網膜年齢差と死亡との関連を検討した。

 多変量調整Cox回帰分析の結果、網膜年齢差が1歳増加するごとに全死亡リスクは2%上昇し〔ハザード比(HR)1.02、95%CI 1.00~1.03、P=0.020〕、心血管疾患とがんを除く死亡リスクは3%上昇した(同1.03、1.00~1.05、P=0.041)。

 一方、網膜年齢差と心血管死リスクまたはがん死リスクとの間には有意な関連は認められなかった。

 同氏らは「われわれの知る限り、加齢のバイオマーカーとして網膜年齢差を提唱したのは、今回の研究が初めてである。深層学習モデルによる網膜年齢判定性能は、これまでのバイオマーカーを凌ぐ優れたものであった」と述べ、「今回の研究では網膜年齢差が死亡リスク上昇の独立した予測因子であることを示した」と指摘。その上で「今回の知見は、健康的なエイジングについて網膜年齢差が新たな洞察を提供することを示唆している。網膜年齢差の応用および加齢に対する理解を深める上で網膜年齢が有用であるかどうか、さらなる研究が必要である」と結論付けている。

(小路浩史)