オランダの前向き多施設コホート研究で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の集中治療室(ICU)治療後1年が経過しても、身体症状(74.3%)、精神症状(26.2%)、認知症状(16.2%)が高率に見られることが示された。COVID-19患者では復職に問題を抱えている例が6割近くおり、他の疾患例より多いという課題も浮き彫りになった。同国・Radboud University Medical CenterのHidde Heesakkers氏らが、2020年3~7月にICUに入室したCOVID-19の生存者が対象の質問票調査に回答した246例の解析結果を、JAMA2022年1月24日オンライン版)に発表した。(関連記事「急増するコロナ後遺症の実態」)

ICU生存者の1年後の転帰を調査

 集中治療後症候群(PICS)は、①身体機能、②精神機能、③認知機能―の3領域の障害に分類され、1年死亡率の上昇、医療費の増加およびQOL低下に関連している。COVID-19によりICU治療を受けた患者は、これらの3領域の全てで短期的な症状も示されているが、長期的な転帰は不明である。今回の研究は、ICU生存者を5年間追跡する多施設前向きコホートであるMONITOR-IC研究(BMJ Open 2017; 7: e018006)の一環として実施し、COVID-19のICU生存者における1年後の身体症状、精神症状、認知症状を評価した。

 対象は、COVID-19における第一波流行(2020年3月1日~7月1日)中にCOVID-19と診断され、オランダの11施設でICU治療を受けた16歳以上の退院後生存者で、1年後まで追跡した。ICU入室期間が12時間未満、平均余命が48時間未満または緩和ケアを受けている患者は除外した。

 主要評価項目は、自己報告式質問票で測定した身体症状〔フレイル(臨床的フレイル尺度5点以上)、異常疲労(Checklist Individual Strength:CIS下位尺度疲労8項目27点以上)、身体機能障害30項目〕、精神症状〔Hospital Anxiety and Depression scale(HADS)不安尺度8点以上、同抑うつ尺度8点以上〕、心的外傷後ストレス障害(PTSD:出来事インパクト尺度平均1.75点以上)、認知症状〔Cognitive Failure Questionnaire(CFQ)14項目43点以上〕の発生とした。

生存者の3分の2に新たな身体症状

 ICUを生存退院した452例中302例をコホートに登録、うち246例(81.5%)がICU入室1年後の質問票調査に回答した。246例の平均年齢は61.2歳、男性が176例(71.5%)、ICU入室期間中央値は18.5日(四分位範囲11~32日)だった。

 1年後の質問票への回答を分析した結果、身体症状は245例中182例(74.3%、95%CI 68.3~79.6%)、精神症状は244例中64例(26.2%、同20.8~32.2%)、認知症状は241例中39例(16.2%、同11.8~21.5%)で見られた。全体の30.6%に2領域以上の症状が、10.5%は3領域全ての症状があった。また、ICU入室前に就業していた生存者の57.8%が仕事関連の問題(病欠中や時短勤務など)を抱えていた。

 新たな身体症状(悪化を含む)は246例中165例(67.1%、95%CI 60.8~72.9%)で見られた。症状別では、フレイルが最多で38.9%、次いで関節のこわばりが26.3%、関節痛が25.5%、筋力低下が24.8%、筋肉痛が21.3%、呼吸困難が20.8%だった。

 精神症状のうち、不安は246例中44例(17.9%、95%CI 13.3~23.3%)、抑うつは246例中45例(18.3%、同13.7~23.7%)で、さらに244例中24例(9.8%、同6.4~14.3%)ではPTSDの症状が見られた。

フレイルや骨格筋系問題、復職困難多い

 以上の結果から、Heesakkers氏らは「COVID-19のICU治療1年後の生存例を対象とした今回の前向きコホート研究では、身体症状、精神症状、認知症状が高頻度に報告された。さらに生存者の多くは、COVID-19重篤化の結果として虚弱または筋骨格系の問題を経験し、復職にも支障を来していた」と結論している。

 非COVID-19のICU生存者を対象とし、今回と同様の質問票およびカットオフ値を用いたMONITOR-IC研究の別の検討結果(Am J Respir Crit Care Med 2021; 203: 1512-1521)と比較すると、COVID-19のICU治療1年後の身体症状(74.3% vs. 77.0%)と認知症状(16.2% vs. 14.0%)の頻度は類似していたが、相違点もあった。同氏らは「COVID-19のICU生存者の1年後の精神症状(26.2%)は、他の疾患でICU治療を受けた生存者(35.5%)に比べ低率だった一方、職場復帰の問題がより多かった(57.8% vs. 43%)」と述べている。

(坂田真子)