ミャンマーでクーデターを起こした国軍による支配の長期化は、辺境地域の医療に深刻な影響を及ぼしている。タイと隣接する東部では国境を行き来できなくなり、住民がタイ側で治療を受けられなくなった。タイ北西部メソトで難民らの治療に当たってきた診療所「メタオ・クリニック」のシンシアマウン院長(62)は「特に緊急時は非常に厳しい状況だ」と顔を曇らす。
 クリニックは国軍の弾圧を逃れ、難民としてタイに渡った少数民族カレンの院長が1989年、仲間と立ち上げた。外科や産婦人科、眼科など各科を備え、ミャンマー出身の難民や出稼ぎ労働者の治療に従事。患者の半数はミャンマーから国境を越えて来院していた。
 ところが、クーデターで国境の往来が厳しく規制された。院長は「ミャンマー側では困難な帝王切開や高度な治療が必要な住民も来られなくなった」と懸念を示す。ミャンマー側の住民の元には、移動制限でNGOも支援に行けないという。
 院長は国軍の人権侵害は60年代から続いており、「状況は何も変わっていない」と語りつつも、「クーデター後、市民は団結を強めている」と指摘。「次世代が国軍の支配下に置かれることは誰も望んでいない。若者の未来のために抵抗する動きが活発化している」と変化に期待を込めた。 (C)時事通信社