気温や気圧などの気象は、慢性疼痛患者の疼痛の重症度に関連することが複数の研究で示され、気象関連痛(天気痛)として注目されている。しかし、そのほとんどは集団レベルで検討されており、個人の気象感受性の有無や程度が考慮されていなかった。そこで、英・University of ManchesterのBelay B. Yimer氏らは、英国の慢性疼痛患者を対象に、スマートフォンのアプリを用いた追跡調査の研究データを基に、毎日の疼痛の重症度と気温、気圧、湿度、風速との関連について検討。これらの気象パラメータと関連した疼痛の悪化が認められた患者の割合は2.3~11%で、一部のサブグループにおいてのみ気象感受性が認められたとする解析結果をPain Rep2022; 7: e963)に報告した(関連記事「天気痛には抗めまい薬の予防投与を!」)

関節炎や線維筋痛症などの患者6,000例を解析

 これまで、数多くの研究で慢性疼痛患者における気象と疼痛の程度との関連が検討されているが、結果は一貫していない。その要因として、慢性疼痛例には気象感受性が強い者と弱い者、さらに感受性が全くない者がいるなど、患者ごとに疼痛反応にばらつきがある可能性が考えられる。しかし、先行研究のほとんどは集団レベルで気象が疼痛の重症度に及ぼす平均的な影響について検討しており、個人の気象感受性の差が考慮されていなかった。

 Yimer氏らは、2016年1月20日~17年4月20日に英国の慢性疼痛患者約1万3,000例を対象に、スマートフォンのアプリを用いて毎日の痛みの症状と気象の関連について検討する目的で大規模研究Cloudy with a Chance of Painを実施。湿度や風速の上昇、気圧の低下が疼痛の悪化に関連していたとする解析結果を報告している(NPJ Digit Med 2019; 2: 105)。同氏らは今回、「研究参加者の一部のサブグループにおいてのみ気象と疼痛の重症度に関連が見られる」との仮説を立て、検証した。

 解析には研究用アプリをダウンロードした参加者1万3,207例のうち、ベースライン時に年齢、性、慢性疼痛の原因疾患、気象と疼痛の関連についての考え(「関連する可能性はない:1点」~「関連する可能性は極めて高い:10点」で評価)に関する質問票に回答し、研究期間中に疼痛の程度(①無痛、②軽度、③中等度、④重度、⑤極めて重度―の5段階で評価)について少なくとも2日分のデータを送信し、曝露した気温や気圧などの気象データの1日当たりの平均値を算出するのに十分な位置情報が得られた6,213例(平均年齢48.68±13.0歳、女性5,519例)を組み入れた。疼痛の原因疾患は関節炎(詳細は不明)が34.4%で最も多く、次いで変形性関節症(28.9%)、線維筋痛症(27.5%)が続いた。

 主要評価項目は、毎日の自己報告に基づく疼痛の程度とした。居住地域から最も近い位置にある英国気象庁の測候所の観測データに基づき、参加者が曝露した1日の気温、気圧、相対湿度、風速の平均値を推定。気象と疼痛の関連についてはベイズ・マルチレベルモデルを用いて解析した。

気圧10hPa上昇ごとに中等度以上の疼痛リスク0.4%低下

 追跡期間の中央値は106日(四分位範囲53~215日)であった。解析の結果、集団レベルでは、中等度以上の疼痛を経験するリスクは相対湿度が10%ポイント上昇するごとに1.5%上昇、風速が1.0m/秒強まるごとに0.4%上昇、気温が1℃上昇するごとに0.1%低下、気圧が10hPa上昇するごとに0.4%低下することが示された。

 次に、気象感受性を有するサブグループを同定するため、気象と疼痛の関連について参加者レベルで評価した。4つの気象パラメータ(1日の気温、相対湿度、気圧、風速の平均値)について、年齢、性、気象と疼痛の関連についての考え、気分、活動レベルを調整して解析した。その結果、気温に対する感受性を有する割合は11%(高値4.7%、低値6.3%)、相対湿度に対する感受性を有する割合は3.5%(同2.9%、0.6%)、気圧に対する感受性を有する割合は2.3%(同0.7%、1.6%)、風速に対する感受性を有する割合は2.8%(同2.3%、0.5%)で、気象感受性を有するのは慢性疼痛患者の一部であることが示された()。

. 各気象パラメータの感受性保有率

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Pain Rep 2022; 7: e963

気温の低下と上昇の感受性保有率は同程度

 また、4つの気象パラメータのうち、低値と高値で感受性を有する患者の割合に違いが見られるものもあった。例えば、気温は疼痛の悪化と低気温が関連していた割合(6.3%)と、高気温が関連していた割合(4.7%)は同程度であり、全体的な気温による疼痛レベルへの影響は軽度であった。

 一方、疼痛の悪化に相対湿度または風速の上昇が関連していた割合はそれぞれ2.9%、2.2%であったのに対し、低下が関連していた割合はいずれも0.6%と少なかった。疼痛の悪化と気圧の低下が関連していた割合は1.6%であったのに対し、気圧の上昇に関連していた割合は0.7%と低かった。

 疼痛の原因疾患による気象感受性の保有率に大きな差は見られなかった。

 以上から、Yimer氏らは「慢性疼痛患者における気象への感受性は、一部のサブグループでより顕著だった。また、気象感受性を有する患者では気象と疼痛の関連の方向性が異なることも明らかになった」と結論。その上で、痛みの発生を事前に予測するための"天気痛予報"の開発など、今後、気象と疼痛の関連の知見を活用する場合には、予測の個別化が必要となることも示されたと付言している。

(岬りり子)