緑茶などに含まれるカテキン類の一種エピガロカテキンガレート(epigallocatechin gallate;EGCg)は、他のカテキン類やポリフェノール類に比べ強い抗ウイルス活性を示すことが知られている(Molecules. 2018; 23: 2475)。ただしEGCgは抗酸化作用が強く、保存安定性に欠けることが課題であった。株式会社HPGは、EGCgを1万ppmと高濃度のまま水溶液化する技術の開発に成功。九州保健福祉大学副学長・薬学部長・薬学科長/同大学院医療薬学研究科教授/薬学部薬学科生化学講座主任教授の黒川昌彦氏は1月26日、同氏らの研究チームがEGCgの水溶化技術を用いて行ったEGCgのウイルス不活化効果を発表した。

鍵はEGCgとウイルス粒子の直接作用

 黒川氏らは、EGCgがインフルエンザウイルスの細胞吸着・侵入を阻害するという仮説を立てた。そこで細胞へのウイルス吸着・侵入に際するEGCgの作用に重点を置き、EGCgの抗インフルエンザウイルス効果と作用機序について検証した。

 In vitroにおいて①A型インフルエンザウイルス〔Bangkok-H1N1株、PR8-H1N1株、Aichi-H3N2株〕およびB型インフルエンザウイルス〔Singapore株〕各5,000PFU/mL+リン酸緩衝生食水(PBS)で希釈した水溶性EGCg、②同4種のウイルス各5,000PFU/mL+PBSで希釈した粉状EGCg含有溶媒―をそれぞれ混合し(混合後のウイルス量:500PFU/mL)、イヌ腎臓由来のMDCK(Madin-Darby canine kidney)細胞に200μLずつ滴下して1時間吸着させ、寒天培地を重層して感染細胞死プラーク(以降、プラーク)の形成を促進。EGCg量が0ppm時のプラーク数を100%とし、プラーク量半減時のEGCg濃度を50%効果濃度(EC50)として比較検討した。

 その結果、4種のインフルエンザウイルスに対して水溶性EGCgはいずれもEGCgが細胞毒性を示す濃度(85.6ppm)より1/3~1/92という低濃度でインフルエンザウイルスの吸着・侵入を阻害することが明らかとなった(EC50:Bangkok-H1N1株1.41±0.17ppm、PR8-H1N1株2.19±0.09ppm、Aichi-H3N2株2.76±0.23ppm、Singapore株0.93±0.35ppm)。一方、EGCg粉状溶媒に抗ウイルス作用は認められなかった。

 次に同氏らは、③水溶性EGCgで処理したMDCK細胞に各インフルエンザウイルスを感染・吸着させて寒天培地を重層、④各インフルエンザウイルスをMDCK細胞に吸着させた後、ECGg水溶液を加えて寒天培地を重層―し、それぞれのプラーク数を測定した。

 ウイルス感染前にMDCK細胞を水溶性EGCgで処理した場合は、ウイルス増殖を阻害できなかった。一方、ウイルス感染したMDCK細胞を水溶性EGCgで処理した場合、PR8-H1N1株以外の3株でウイルスの吸着・侵入が阻害された(EC50:Bangkok-H1N1株19.3±1.80ppm、Aichi-H3N2株22.9±1.4ppm、Singapore株11.1±1.6ppm)。同氏は「感染予防にはウイルス粒子とEGCgの直接接触が重要と考えられる。水溶性EGCgは、感染細胞から放出された子孫ウイルスによる細胞への再感染を阻害する可能性がある」との見解を述べた。

EGCg添加の飲料にも抗インフル効果

 続いて黒川氏らは、EGCg水溶化技術を用いたEGCg含有飲料を用いて抗インフルエンザウイルス効果を検討した。先述の各インフルエンザウイルスまたはEGCgを混ぜた白酒を、MDCK細胞に滴下して同様の処理を行い、プラーク数を測定。その結果、EGCg含有白酒は水溶性EGCgと同様に各インフルエンザウイルスの吸着・侵入を阻害した(EC50:Bangkok-H1N1株0.40±0.05ppm、PR8-H1N1株0.80±0.07ppm、Aichi-H3N2株0.77±0.05ppm、Singapore株0.54±0.01ppm)。

 さらに同氏らは、A型インフルエンザウイルス〔Bangkok/93/03(H1N1)〕に対するノンアルコール飲料(微炭酸レモン飲料、コーラ飲料、牛乳)の効果をEGCg添加の有無別に比較検討した。EGCg添加の微炭酸レモン飲料とコーラ飲料では、抗インフルエンザウイルス効果が見られた(EC50:微炭酸レモン飲料1.45±0.08ppm、コーラ飲料0.51±0.94ppm)が、牛乳では効果が見られなかった。同氏は「一部の飲料ではEGCgの添加によりインフルエンザウイルスの細胞吸着・侵入を阻害した。ただし、飲料によっては蛋白質成分などによってEGCgの抗ウイルス効果が軽減された可能性がある」と述べた。

安全な感染対策に活用の可能性

 最後に黒川氏は、国立大学大学院感染学研究チームの検討を紹介した。コロナウイルス(HCoV-229E)に対する水溶性EGCgの不活化効果を見たものでは、直接不活化効果と吸着阻害効果を介した水溶性EGCgのHCoV-229Eに対する感染性低減効果が明らかになり、極めて低濃度のEGCg(EC50:0.5~2.0ppm)で抗コロナウイルス効果を発揮することが示唆されたという。

 同氏は「水溶性EGCgの構成成分は全て厚生労働省が許認可する食品添加成分であるため、体内での副反応リスクが少ない。子供から高齢者まで安心して口腔ケアや消毒液などに活用でき、安全なウイルス除去の掃除液としての活用も考えられる。さらに家畜のインフルエンザ対策としても、安全に利用できるのではないか」と締めくくった。

(編集部)