香港・Chinese University of Hong KongのQin Liu氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の症状消失後も後遺症が続くCOVID-19罹患後症候群(PACS、別名long COVID)と腸内細菌叢との関連を検討するため、COVID-19患者106例と非COVID19患者68例(対照群)の糞便を用いて腸内細菌叢の構成を比較する前向き研究を実施。その結果、PACS非発症例は6カ月後に対照群と同等の腸内細菌叢の構成を示した一方、PACS発症例ではRuminococcus gnavusBacteroides vulgatusなど特定の細菌の割合が多かったと、Gut2022年1月26日オンライン版)に発表した。

コロナ患者の4分の3で疲労や筋力低下、睡眠障害などの後遺症

 COVID-19の長期的な合併症については不明な点が多いものの、患者の4分の3がCOVID-19回復から6カ月後に少なくとも1つの症状を訴えており、疲労、筋力低下、睡眠障害などの全身症状が頻繁に報告されている。

 PACSは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の陰性化から4週間後も少なくとも1つの症状が持続するものと定義されており、腸内細菌との関連が示唆されているが、十分には解明されていない。

 Liu氏らは、2020年2月1日~8月31日に香港の地域病院3施設でCOVID-19の確定診断を受け入院した患者106例(年齢中央値48.3歳、女性56例)を登録。COVID-19流行前の2019年9~11月に大腸内視鏡検査前に便検体を採取された者のうち、対象と年齢、性、併存疾患、食事パターンをマッチングさせた非COVID-19の対照群68例を選出した。両群計258の便検体から採取した糞便マイクロバイオームをショットガン・メタゲノム解析し、PACSと腸内細菌叢との関連を調査する前向き研究を実施した。

 COVID-19患者の便検体は入院時と退院1カ月後および6カ月後に採取した。対照群の除外基準は、①過去6カ月以内の抗菌薬使用、②過去3カ月の下剤または下痢止め薬の使用、③最近の食事パターンの変化(ベジタリアンなど)、④既知の複合感染症または敗血症、⑤重篤な臓器不全の既往歴、⑥過去6カ月の腸管手術、⑦ストーマ造設、⑧妊婦―とした。

PACS患者では腸内細菌叢の多様性と豊かさが乏しい

 COVID-19の重症度は81.1%が軽度〜中等度で、発症の3カ月後に86例(81.1%)、6カ月後には81例(76.4%)でPACSが報告された。6カ月後に最も多く見られた症状は疲労(31.3%)、次いで記憶力の低下(28.3%)、脱毛(21.7%)、不安(20.8%)、睡眠困難(20.8%)だった。

 解析の結果、入院時の腸内細菌叢とPACS発症に関連が示された。PACS非発症例は、6カ月後に対照群と同等の腸内細菌叢構成に回復していたが、PACS発症例では6カ月後も対照群と異なったままだった。PACS発症例における腸内細菌叢の多様性と豊かさ(それぞれShannon index diversityとChao1 richness indexで測定)は、PACS非発症例や対照群に比べて有意に低かった。

 また6カ月後、PACS 発症例では対照群に比べてR. gnavusB. vulgatusの構成割合が有意に高く、Collinsella aerofaciensFaecalibacterium prausnitziiの構成割合が有意に低かった()。

図. PACS発症例と対照群の腸内細菌叢構成

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Gut 2022年1月26日オンライン版

 腸内細菌叢の構成とCOVID-19回復後6カ月におけるPACSの一般的な症状30種類との関連性を調べたところ、持続的な呼吸器症状は日和見菌と相関しており、神経精神症状および疲労はClostridium innocuumおよびActinomyces naeslundiiを含む院内感染起因菌と相関していた(いずれもP<0.05)。

 Bifidobacterium pseudocatenulatumF. prausnitziiRoseburia inulinivoransR. hominisなど、宿主免疫への有益性が知られている複数の腸内細菌種の相対存在量は、6カ月後のPACS発症と最も強い逆相関を示した。

 今回の結果について、Liu氏らは「急性COVID-19回復後に持続する症状と腸内細菌叢の構成との関連について、観察的エビデンスを提供した」と結論。「腸内細菌叢への介入がPACSからの回復を促進するかどうかについては、さらなる研究が必要である」と付言している。

(今手麻衣)