脳卒中予防には高血圧の管理・治療が重要だが、脳卒中急性期に降圧薬の使用を継続すべきか否かについては明確でない。こうした中、英・University of NottinghamのLisa J. Woodhouse氏らは、脳卒中発症後12時間以内の患者における降圧薬の使用継続と一時的な中止による転帰を比較検討するため、国際多施設共同ランダム化比較試験(RCT)ENOSのサブグループ解析を実施。急性期に降圧薬の使用を一時的に中止した群と比べて、継続した群では90日後の機能的転帰の悪化が認められたとする結果をEClinicalMedicine2022; 44 101274)に報告した。

2件の先行研究では中止群と継続群で有意差なし

 脳卒中の初発および再発の予防には高血圧の管理・治療が重要であることから、脳卒中発症前に降圧薬を使用していた患者は少なくない。こうした中、脳卒中の急性期に降圧薬の使用を継続すべきか、一時的に中止すべきかについては臨床上しばしば問題となってきた。現行ガイドラインでは、医学的かつ神経学的な安定が得られ、安全に嚥下できる状態になれば降圧薬の使用を再開すべきとの推奨が示されている。一方、脳卒中発症から48時間以内の患者を対象に検討した2件の臨床試験(ENOS、COSSACS2)では、降圧薬の継続投与群と中止群で死亡や機能的転帰に有意差はないことが示されている。

 ただ、ENOSでは脳卒中の発症から6時間以内および6~12時間後の時間帯に登録された患者において、降圧薬の使用継続で転帰不良となる傾向が認められている。また、両試験のメタ解析では、発症から12時間以内に登録された脳卒中患者の降圧薬の使用継続は、一時的に中止した場合と比べ機能的転帰の悪化が示されていた。そこで、Woodhouse氏らは今回、ENOSの参加者のうち脳卒中発症後12時間以内に登録された患者のより詳細な転帰についてサブグループ解析を行った。

 ENOSでは、2001~14年に23カ国173施設で18歳以上の虚血性および出血脳卒中患者4,011例を登録。脳卒中発症前に降圧薬を使用していた2,097例を降圧薬使用継続群(継続群)と降圧薬の使用を7日間中止する群(中止群)にランダムに割り付けた。このうち脳卒中発症から12時間以内に登録された384例(継続群185例、中止群199例)をサブグループ解析に組み入れた。主要評価項目は90日後のmodified Rankin Scale(mRS)で評価した機能的転帰とした。

 サブグループ解析対象の平均年齢は71.8歳で女性が50.3%を占めていた。また、虚血性脳卒中の割合が89.1%と高く、総前方循環症候群(total anterior circulation syndrome;TACS)が29.7%を占めていた。

重度脳卒中例と非経口栄養摂取例で特に転帰不良

 解析の結果、中止群と比べて継続群では脳卒中発症から7日後までの血圧が有意に低く、収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)の群間差はそれぞれ15.5mmHg、9.6mmHgであった(いずれもP<0.001)。一方で、中止群と比べて継続群では90日後の機能的転帰が不良となるリスクが有意に高く(調整後の共通オッズ比1.46 、95%CI 1.01~2.11、P=0.044)、死亡リスクも有意に高かった(ハザード比2.17、95%CI 1.24~3.79、P=0.007)。

 また、副次評価項目であるBarthel Indexで評価した日常生活動作(ADL)、European quality of life visual analogue scale(EQ-VAS)で評価したQOL、電話によるMini-Mental State Examination(MMSE)で評価した認知機能、Zung depression scaleで評価した気分についても、中止群と比べて継続群で低下が認められた。

 また、事前に規定されていたサブグループ解析から、継続群の中でも脳卒中の重症度が高い群(交互作用のP=0.040)および非経口栄養摂取群(交互作用のP=0.025)で機能的転帰の悪化度が大きいことが示された。

 Woodhouse氏らは「虚血性脳卒中が大多数を占める発症後12時間以内の患者において、発症前に使用していた降圧薬の継続は機能的転帰やADL、認知機能、QOL、気分の低下ならびに死亡の増加に関連していた。特に重度の脳卒中例および非経口栄養摂取例では、降圧薬の使用継続はリスクが高い可能性がある」と結論。

 ただし、ENOSが実施された時期には機械的血栓回収療法の適応を判断するスクリーニングが日常的に行われていなかったことから、今後の課題として機械的血栓回収療法が施行された主幹動脈閉塞による脳卒中患者を対象に、降圧薬の継続例と中止例で比較することを挙げている。さらに、血圧が著しく高い例や極めて重度の脳卒中例は除外されたため、同氏らは「今回の研究結果を全ての脳卒中患者に当てはめることはできない」と付言している。これらを踏まえた上で、脳卒中発症から12時間が経過し、安全な栄養ルートが確立されるまでは、発症前に使用していた降圧薬の使用を控えることを考慮する必要がある」と述べている。

(岬りり子)