2022年春闘の労使交渉が今月中旬から本格化する。ガソリンや食料品の値上がりなど物価上昇が進む中、賃上げは喫緊の課題だ。労働組合の中央組織、連合は基本給を底上げするベースアップ2%程度と定期昇給相当分を含む4%程度の賃上げを主張。経団連は賃上げを呼び掛けつつ、新型コロナウイルス禍に伴う企業業績の格差拡大に配慮し、一律の数値目標は掲げていない。連合の芳野友子会長と、経営側指針をまとめた経団連の大橋徹二副会長(コマツ会長)に話を聞いた。
 ◇景気回復のカギ=連合の芳野友子会長
 連合の芳野友子会長との主なやりとりは次の通り。
 ―春闘に向けての意気込みは。
 景気回復のカギとなるのが賃上げだ。コロナ禍で不安がある今だからこそ、積極的に人への投資を行う未来志向の賃金決定に転換すべきだ。すべての組合が月例賃金にこだわり、賃上げを要求する方針とした。
 ―物価上昇の影響は。
 生活に大きな影響が出てきている。物価の上昇に賃金が追い付かなければ、経済回復がさらに遅れる。賃上げを実現させることで個人消費を回復させ、経済の好循環を起動させていくべきだ。
 ―格差是正が進んでいない。
 組合が要求し、交渉しなければ前進しない。企業規模や雇用形態、男女間の格差是正は、一度の闘争で全面的に改善できるものではない。各組合で賃金の実態を点検し、しっかり労使で共有して話し合うことが重要だ。中小企業の賃上げ対策の一つには価格転嫁の問題がある。取引価格の適正化を通じ、賃上げしやすい環境整備を政府にも求めていく。
 ―春闘の意義について。
 労働組合に最も注目が集まるこの時期に、(労組を組織して経営側と対等な関係を築く)集団的労使関係を広げることの重要性を社会に訴えていきたい。経営者には自社の組合員が日々何を思い、どう感じているのか、労働者の声にしっかり耳を傾けてほしい。
 ◇一律でなく個別交渉で=経団連の大橋徹二副会長
 経団連の大橋徹二副会長との主なやりとりは次の通り。
 ―今春闘での賃上げの基本的な考え方は。
 企業の業績回復は、まだら模様でK字型だ。業績が高い水準で推移している会社はしっかりとモメンタム(勢い)維持に向けて賃金引き上げと総合的な処遇改善を図ってほしい。飲食、宿泊、空運、鉄道は厳しい。まず事業継続と雇用維持が目の前の大きな項目だ。
 ―企業は物価上昇分をベースアップに上乗せする責務がないか。
 ガソリン価格など物価が上がっているのは事実だ。消費者物価の上昇率も賃金を決める時の一要素になっているのは間違いない。ただ、賃金水準やこれまでの対応は各社で異なる。一律の上乗せではなく、各企業の交渉で決めるべきだ。
 ―格差の是正は。
 男女格差の大きな理由は、管理職比率や勤続年数の差だ。女性が子育てで会社を辞めることがないように、男性の育休も推進していく。中小企業との取引価格の適正化も呼び掛けている。また、同一労働なのに説明できない賃金差があるなら、是正する必要がある。
 ―岸田文雄首相は業績がコロナ禍前の水準に回復した企業に3%超の賃上げを期待すると表明している。
 政府からの期待は伝わっている。各企業が賃上げをするだけの実力があるかだ。経営者が思い切るかどうかもある。 (C)時事通信社