妊娠中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は重症化リスクが高く、子癇前症や早産といった合併症のリスク上昇が懸念されるが、妊婦のワクチン接種とSARS-CoV-2感染に関する疫学データは乏しい。英・University of Edinburgh Usher InstituteのSarah J. Stock氏らは、スコットランド全域にわたる大規模前向きコホート調査を実施。SARS-CoV-2に感染した妊婦は早産および周産期死亡(死産および生後28日以内の死亡)の割合が高かったことをNat Med2022年1月13日オンライン版)に報告した。

妊婦のワクチン接種率は一般女性と比べて低率

 スコットランドの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)症例は2020年3月1日に初めて確認された。SARS-CoV-2の流行は当初は従来型が優勢だったが、2021年1月以降はアルファ株が優勢になり、2021年5月以降にはデルタ株が優勢になった。

 当初、スコットランドでは妊婦に対するワクチン接種について、産科医によるカウンセリングを要し、リーフレットの作成などが行われたが、2021年4月16日に「妊娠していない女性と同時にワクチン接種を提供すべきで、カウンセリングは不要」との方針に変更された。

 2020年12月8日〜21年10月31日に、1万8,399人の妊婦に対して2万5,917回のSARS-CoV-2ワクチン接種が行われた。内訳は、1回目接種が1万2,518回(48%)、2回目接種が1万2,194回(47%)、3回目接種が1,205回(5%)だった。

 接種時期は妊娠前期(0〜13週)が9,905回(38.2%)、中期(14〜27週)が9,317回(35.9%)、後期(28〜40週以上)が6,695回(25.8%)。ワクチンの種類はファイザー製が2万572回(79.4%)、モデルナ製が3,224回(12.4%)、アストラゼネカ製が2,121回(8.2%)だった。アストラゼネカ製ワクチンは接種が開始された初期において、危険因子を有する妊婦に対して用いられた。

 解析の結果、妊婦のワクチン接種率は一般女性(18〜44歳)に比べて大幅に低いことが明らかとなった。スコットランド在住の一般女性(94万7,984人)のうち、84.7%(95%CI 84.7〜84.8%、80万3,241人)が1回目接種を受け、77.4%(同77.3〜77.5%、73万3,942人)が2回目接種を受けていた。一方、2021年10月に出産した妊婦(4,064人)のうち、1回目接種を受けていたのは、42.8%(同41.2〜44.3%、1,738人)、2回目接種を受けていたのは32.3%(同30.8〜33.7%、1,311人)にすぎなかった()。3回接種率は、一般女性が7.0%(同6.9〜7.0%、6万6,001人)、妊婦が0.9%(同0.6〜1.2%、36人)だった。

図. スコットランド在住の一般女性および妊婦のワクチン接種状況

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Nat Med 2022年1月13日オンライン版)

出産28日以内の感染で早産率16.6%、周産期死亡率は1,000人当たり22.6人

 妊娠中にSARS-CoV-2に感染した妊婦4,950人の77.4%(95% CI 76.2〜78.6%、3,833人)、感染により入院した妊婦823人の90.9%(同88.7〜92.7%、748人)、重症化した妊婦104人の98%(同92.5〜99.7%、102人)がワクチン未接種例だった。

 妊娠中にSARS-CoV-2に感染した妊婦の早産率は10.2%(95%CI 9.1〜11.6%)で、感染後28日以内に出産した妊婦では16.6%(同13.7〜19.8%)だった。周産期死亡は全体が19例(死産11例、新生児死亡8例)、感染後28日以内に出産した妊婦が14例(同10例、4例)で、1,000人当たりそれぞれ8.0人(95%CI 5.0〜12.8人)、22.6人(同12.9〜38.5人)だった。なお、妊娠中のSARS-CoV-2感染がない女性の早産率は7.9%(同7.7〜8.1%)、周産期死亡率は1,000人当たり5.6人(同5.1〜6.1人)だった。

 なお、ワクチンを接種した妊婦、ワクチン接種から28日以内に出産した妊婦の早産率は、それぞれ8.6%(95%CI 7.9〜9.4%)、8.2%(同7.0〜9.6%)、周産期死亡率は1,000人当たり4.3人(同2.9〜6.4人)、4.3人(同1.9〜9.2人)だった。SARS-CoV-2感染後の周産期死亡は全てワクチン未接種例だった。

 この結果について、日本産科婦人科学会は「COVID-19が直接または間接的に早産や死亡に寄与したかを評価するための詳細な臨床情報は不明だが、COVID-19が早産や周産期死亡の原因となっている可能性は否定できない。デルタ株流行期の成績である点には留意が必要だが、妊婦と胎児・新生児の健康を守るには、ワクチン接種率を上げることが重要」とコメントしている。

(安部重範)