米・University of WashingtonのChristopher J. L. Murray氏らは、世界疾病負担研究(GBD)2019などのデータを用いて2019年の204カ国・地域における病原菌に対する薬剤耐性(AMR)の発生動向を解析し、結果をLancet2022年1月18日オンライン版)に発表した。2019年にAMRが直接の原因となって死亡した人は世界で127万人と推計され、同氏らは「AMRはHIV感染症やマラリアと同等かそれ以上に重大な世界の健康問題」と指摘している。

サハラ以南アフリカ西部で死亡率が最も高く、日本は上位10位以内に該当

 Murray氏らは、GBD2019のデータに加えて論文のシステマチックレビュー、病院システム、サーベイランスシステムなどから4億7,100万人、7,585 location-yearsのデータを収集し解析に組み入れた。主な感染症12種類、病原菌23種類、抗菌薬(単剤または併用)18種類、病原菌と抗菌薬の組み合わせ88種類を解析対象とし、2019年の204カ国・地域におけるAMRによる死亡者数を推計した。

 2019年に世界全体で、「全ての抗菌薬耐性感染症が発生しなかったら死亡しなかった」という仮定に基づき推計したAMRに関連する死亡(AMR関連死)は495万人〔95%不確実性区間(UI)362万~657万人〕で、そのうち「全ての抗菌薬耐性感染症が抗菌薬感受性感染症だったら死亡しなかった」という仮定に基づき推計したAMRが直接の原因となった死亡(AMR起因死)は127万人(同91万1,000~171万人)だった。

 地域別では、2019年のAMRによる死亡率(10万人当たり)が最高の地域はサハラ以南アフリカ西部で、AMR関連死が114.8人(95%UI 90.4~145.3人)、AMR起因死が27.3人(同20.9~35.3人)だった。最低はオーストラレーシアで、AMR関連死が28.0人(同18.8~39.9人)、AMR起因死が6.5人(同4.3~9.4人)だった。日本を含むアジア太平洋諸国(高所得国)は、2019年のAMRによる死亡率がGBD全21地域中9番目に高かった()。

図. 地域別に見たAMRによる全年齢死亡率

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Lancet 2022年1月18日オンライン版

AMR起因死の73.4%は6種類の細菌が原因

 感染症の種類別では、2019年に世界で発生したAMR起因死の78.8%(95%UI 70.8~85.2%)が下気道感染症、血流感染症、腹腔内感染症の3種類によるものだった。特に、下気道感染症は単独で150万人のAMR関連死、40万人のAMR起因死を引き起こしていた。

 病原菌の種類別では、2019年に世界で最も多くのAMR関連死を引き起こしたのは大腸菌、次いで黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、肺炎球菌、アシネトバクター(A. baumannii)、緑膿菌の順に多かった。これら6種類で、357万人(95%UI 262万~478万人)のAMR関連死、92万9,000人(同66万~127万人)のAMR起因死〔AMR起因死全体の73.4%(同66.9~78.8%)に相当〕を引き起こしていた。

MRSAを含む7種類の耐性菌で各5万~10万人が死亡

 病原菌と抗菌薬の組み合わせ別では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が2019年に世界で10万人超のAMR起因死を引き起こしていた。さらに、超多剤耐性(XDR)結核菌を除く多剤耐性結核菌、第三世代セファロスポリン耐性大腸菌、カルバペネム耐性A. baumannii、フルオロキノロン耐性大腸菌、カルバペネム耐性肺炎桿菌、第三世代セファロスポリン耐性肺炎桿菌の6種類がそれぞれ5万~10万人のAMR起因死を引き起こしていた。

 GBDで疾患の詳細レベル3に分類されている2019年の死因の中で、AMR関連死は虚血性心疾患と脳卒中に次ぐ第3位、AMR起因死はHIV感染症とマラリアより上位の第12位を占めた。

 Murray氏らは「AMRは世界の重大な健康問題であり、対策が急務」と述べ、対策の5大要素として、①感染予防・管理プログラムの拡充、②ワクチン接種による感染予防、③ヒトの治療以外(農業用など)による抗菌薬への曝露抑制、④不必要な抗菌薬使用(ウイルス感染症の治療など)の抑制、⑤新薬開発への投資と第二選択薬へのアクセス向上―を挙げている。

(太田敦子)