新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各地に適用された「まん延防止等重点措置」は、東京都をはじめ大半の地域でなお出口が見えない。変異株「オミクロン株」の強い感染力が背景にあり、「先手対応」をアピールしてきた岸田文雄首相にとって誤算が続いている。
 「新規感染者数は昨年8月半ばの4倍弱であり、高い警戒感を持って医療提供体制を稼働していく必要がある」。松野博一官房長官は3日の記者会見で、前日に2万人を超えた東京の感染者数に触れ、危機感をあらわにした。
 東京など13都県に重点措置が適用されたのは1月21日。政府が対策の集中期間と位置付けた2週間が過ぎたが感染状況は悪化が続く。1日当たりの全国の死者数は3日、昨夏の「第5波」のピーク時と同水準の90人となった。専門家は「重症化率は低いが、感染急増で既往症が悪化して亡くなるケースが多くなっている」と警鐘を鳴らす。
 首相もオミクロン株による「第6波」を想定し、万全の備えをアピールしてきた。昨年12月の臨時国会での所信表明演説では「予防、発見から早期治療までの流れを抜本強化する」として、ワクチンや検査体制の確保を対策の柱に据えたはずだった。
 ところが、官邸の指示が届かなかったことをうかがわせる事態が相次いだ。検査キットの確保をめぐり、首相は1月になってメーカーに増産を要請。政府関係者は「メーカーからすれば『何を今さら』という話だ」と自嘲気味に語った。
 ワクチンの3回目接種も3日時点で全人口に占める接種率は4.4%。接種の遅れが高齢者の感染リスクを高めており、野党は「去年やっておくべきことをやっていなかった」(立憲民主党の長妻昭氏)と追及を強めている。
 東京都は3日、4段階で表す医療提供体制の警戒レベルを1段階引き上げ、最も深刻な「逼迫(ひっぱく)」状態とした。政府は国民への強い行動制限を伴う緊急事態宣言には否定的で、「月末には状況は改善する」(首相周辺)との見方もある。ただ、感染がさらに長引けば人の接触が増える卒業・入学シーズンに及ぶことも想定され、首相は一層難しい対応を迫られる。 (C)時事通信社