兵庫県と神戸大学大学院感染症センター臨床ウイルス学分野教授の森康子氏らは、ファイザー社製新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン(トジナメラン)を2回接種した同大学病院の医師を対象に、接種後2カ月時点および7カ月時点、3回目(ブースター)接種後の変異株に対する中和抗体を測定。その結果、ブースター接種を受けた72人全員がオミクロン株に対する中和抗体を獲得し、抗体価は2回目接種後2カ月時点および7カ月時点に比べ、それぞれ32倍、39倍と著明に高かったと査読前論文公開サイトmedRxiv(2022年1月25日オンライン版)に報告した(関連記事「ワクチン3回目接種がオミクロンに有効」)。

7種の変異株に対する中和抗体価を測定

 世界中で感染拡大が見られるオミクロン株は、スパイク蛋白質に30カ所以上の変異があることが報告されている。そのうち、受容体結合ドメイン(RBD)での変異は15カ所に上り、SARS-CoV-2ワクチンおよび抗体医薬を用いた治療に対し、免疫逃避による有効性の低下が指摘されている。

 森氏らは、SARS-CoV-2感染歴がなく2021年6~7月にトジナメラン2回接種を完了した同大学病院の医師82人を対象に、接種後2カ月時点および7カ月時点における7種のSARS-CoV-2変異株〔従来株(D614G)、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株、オミクロン株〕に対する血清中の中和抗体価を測定。さらに、ブースター接種を受けた72人では血清中の中和抗体価も測定し、各抗体価の推移を解析した。

2回目接種後7カ月時点で、オミクロンへの中和抗体陽性率はわずか6%

 その結果、2回目接種後2カ月時点では従来株とアルファ株に対しては82人全員が、デルタ株に対しては76人(92.7%)が中和抗体を有していたものの、オミクロン株に対しては23人(28%)しか有していなかった。また、オミクロン株に対する抗体価は従来株および他の変異株に対する抗体価と比べ、いずれも有意に低かった(全てP<0.001)。

 38歳以下(若年群)、39~58歳(中高年群)、59歳以上(高齢群)の3群間の比較では、高齢群で中和抗体陽性率の低下傾向が見られたが(デルタ株では若年群、中高年群が各97%、高齢群が79%)、オミクロン株では全群で中和抗体陽性率が低く(若年群32%、中高年群31%、高齢群16%)、有意差はなかった。

 2回目接種後7カ月時点にはさらに抗体価が低下し、中和抗体陽性率はデルタ株で67%、オミクロン株ではわずか6%だった。

ブースター接種で高齢群の抗体価は27倍に

 ブースター接種後の解析では、72人全員が従来株およびオミクロン株を含む全ての変異株に対する中和抗体を獲得していた(1)。

1. 従来株と主な変異株に対する中和抗体陽性率の推移

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 また、オミクロン株に対する抗体価は、2回目接種後2カ月時点および7カ月時点よりはるかに高く、それぞれ32倍(95%CI 27~37倍)と39倍(同32~46倍)だった(2)。

2. 従来株と主な変異株に対する中和抗体価の推移

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 年齢別の比較では、2回目接種後7カ月時点と比べ、若年群で41倍(95%CI 30~56倍)、中高年群で43倍(同32~58倍)、高齢群でも27倍(同30~36倍)に上昇していた(3)。

3. 年齢別に見たオミクロン株に対する中和抗体価の推移

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(図1~3ともmedRxiv 2022年1月25日オンライン版

 ワクチンの副反応については、発熱が1回目接種後0%、2回目接種後20%、ブースター接種後33%、倦怠感がそれぞれ5%、17%、63%と上昇する傾向があり、接種部位の疼痛は89%、87%、90%と差は見られなかった。また、重大な副反応は認められなかった。

 以上から、森氏は「トジナメランの2回接種は従来株およびオミクロン以外の変異株に対しては有効であるものの、オミクロン株による感染を抑制するには十分でないことが示された。一方で、ブースター接種は年齢にかかわらずオミクロン株に対する抗体価を上昇させた」と結論。オミクロン株が猛威を振るう現状において、「ブースター接種が感染抑制の鍵となることが示された」と述べている。

(渕本 稔)