日本ではコロナ禍の影響に自殺の増加が増加しているが、原因や動機に関する包括的な調査は行われていない。宮崎大学臨床神経科学講座精神医学分野の香田将英氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における自殺の増加および原因・動機を分析。①流行第二波時の2020年7月~11月に自殺の増加が認められた、②原因・動機には性差があり、女性は家庭や仕事、健康など多岐にわたり、かつ長期に及んだ―という結果をJAMA Netw Open2022; 5: e2145870)に報告した。

7カテゴリーに大別し自殺者数増加を分析

 一般に、自殺率は女性よりも男性で高いが、コロナ禍の日本では女性の自殺増が報告されている(JAMA Netw Open 2021; 4: e2037378)。香田氏らは、厚生労働省が所管する2020年1月〜21年5月の自殺者の月別全国データを用い、自殺増の要因を特定するための分析を実施。自殺者の実測値を推定値の片側95%CI上限と比較し、月別に自殺者数の増減を算出した。推定値の算出には準ポアソン回帰モデルを用いた。

 動機は「家庭問題」、「健康問題」、「経済・生活問題」、「勤務問題」、「男女問題」、「学校問題」「その他(模倣自殺など)」に分類。さらに52のサブカテゴリー(例:「健康問題」では身体の病気、うつ病、統合失調症、アルコール依存症、薬物乱用、その他の精神疾患、身体障害の悩み、その他)に分けた。

 2020年1月〜21年5月の自殺者は2万9,938人(女性33.3%、20歳未満3.7%、80歳超10.5%)で、そのうち、原因・動機が判明しているのは2万1,027人(70.2%、女性35.3%)だった。

自殺増は2020年10月が最大、「健康問題」が大きな理由

 第二波時に該当する2020年7~11月の5カ月間に自殺の増加が認められ、月別では2020年10月が最も多かった(25.8%増、)。男女別では、男性は2020年10〜11月、女性は2020年7~12月と2021年3月に増加していた。

図. 2020年1月〜21年5月における自殺者の実測値と推定値

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JAMA Netw Open 2022; 5: e2145870)

 原因・動機別に見ると、最も多かったのは2020年10月の「健康問題(32.3%増)」だった。同月は男性の「学校問題」を除く全てのカテゴリーで自殺者の実測値が推定値を上回った。男女別では、男性は2020年8月の「その他(24.3%増)」、女性は2020年8月の「学校問題(85.7%増)」が最も増加率が高かった。女性では「家庭問題」「健康問題」「勤務問題」で5カ月連続の自殺増が見られた。

 サブカテゴリー別に見ると、男性では「親子問題」「身体の病気」「身体障害」「その他の負債」「仕事の失敗」「仕事疲れ」「失恋」「学業の失敗」「孤独」に関し、2020年1月〜21年5月中の2つの月で自殺が増加していた。女性では「職場の人間関係」が4つの月、「生活苦」「仕事の失敗」が3つの月、「親子関係の不和」「夫婦関係の不和」「その他の家族関係の不和」「育児問題」「身体の病気」「うつ病」「不貞」「その他の人間関係に伴う苦痛」が2つの月で認められるなど、男女差があった。

女性の自殺動機は多岐、影響は数カ月に及ぶ可能性

 香田氏らは「男性の自殺には主に仕事に関連したストレスが関連し、失恋や人間関係の悩み、孤独といったサブカテゴリーでも自殺率が高い月が見られた。女性では失業や育児・介護などに加え、健康問題が大きな負担になっている可能性が示唆された」と結論。女性の自殺増がより長期に及んだ点については「新型コロナの流行は特に女性のメンタルヘルスに悪影響をもたらし、休校や在宅勤務、育児および介護時間の延長、医療機関へのアクセス制限などが関連している可能性がある」と推察している。

(編集部)