インサイダー取引の舞台となったベンチャー企業「テラ」は新型コロナウイルスの治療薬開発をうたっていたが、「新薬開発は順調」と強調する情報開示の信ぴょう性を疑問視する投資家もおり、株価は乱高下を続けた。
 テラ社が「コロナ治療薬の開発に乗り出す」と発表したのは2020年4月。世界的に感染が広がり、治療薬開発に注目が集まっていた時期だった。当時、国内で承認された治療薬はなく、投資家の期待を反映して同社株は高騰した。
 同年7月には「メキシコでの治験で、重症コロナ患者30人のうち26人の回復が確認された」などとする情報を公表した。だが、その根拠となるデータは開示せず、各国の治験状況を掲載する米国立医学図書館のデータベースにも登録はなかった。
 テラ社は同年9月、「メキシコの子会社と共同開発した治療薬『プロメテウス』が同国イダルゴ州で薬事承認された」と発表。これを虚偽だと指摘した人物の刑事告訴を役員会で決議したこともあった。
 一連の情報開示に疑問の声が上がるたび、株価は下落した。こうした中、テラ社は21年8月、「メキシコの子会社や、イダルゴ州の薬事承認制度は存在が確認できなかった」などとする社内調査結果を公表した。その後、20年4月以降に発表した適時開示情報60件について、「このうちの24件は一部または全部が事実と異なっていた」と明らかにした。 (C)時事通信社