岸田文雄首相の記者会見が1カ月間途絶えている。新型コロナウイルスの感染拡大時に安倍晋三元首相と菅義偉前首相が頻繁に会見していたことを考えれば、過去最大の感染第6波が続く中でのこの空白は異例。「丁寧な説明」を誓った就任時の言葉に疑問符が付きかねない状況だ。
 松野博一官房長官は4日の記者会見で、首相会見の予定を問われ、「情報発信は首相だけでなく、閣僚からも適時適切になされている」と述べるにとどめた。
 首相の会見は1月4日に三重県伊勢市で行った恒例の「年頭記者会見」が最後だ。以来、国内では感染が急拡大。今月3日には1日当たりの新規感染者が10万人を初めて超えたが、首相は会見を開かなかった。感染拡大時には月に3~4回会見することもあった安倍、菅両氏とは対照的だ。
 首相が代わりに多用しているのが、官邸に出入りする際などに、立ち止まって記者団の質問に応じる「ぶら下がり取材」。今年に入って14回行っており、官邸は「ぶら下がりと記者会見は形態の違いはあるが、どちらも同じ目的を持ったもの」(磯崎仁彦官房副長官)と主張している。
 しかし、14回の半分以上は北朝鮮のミサイル発射などコロナ以外が主要テーマ。1時間を超えることもあった安倍、菅両氏の会見に対し、首相のぶら下がりは短ければ1分未満、長くても30分弱だ。国民に直接語りかける冒頭発言もないケースが多く、テレビ中継があるとも限らない。
 3日に「まん延防止等重点措置」の和歌山県適用を決めた際には、首相は全ての説明を担当閣僚に委ね、ぶら下がりにすら応じなかった。
 第6波は感染者数で1~5波をはるかに超えている。それでも重症化率が低いことなどから緊急事態宣言は発令されず、「会見を開けと言う理由が分からない」と首相サイドは強気だ。
 首相は昨年10月の就任会見で、コロナ対策を最優先課題に挙げ、「国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行う」と約束した。立憲民主党は「言葉通り国民の前でしっかり説明すべきだ」(幹部)と批判を強めており、週明けの衆院予算委員会で首相の説明責任をただす構えだ。
 政府コロナ対策分科会の尾身茂会長は4日の記者会見で「リーダーの中途半端ではない強いメッセージが今求められている。首相の口で分かりやすいメッセージを発してもらえるといい」と注文を付けた。 (C)時事通信社