晩婚化などで不妊に悩む男女が増加する中、不妊治療への公的医療保険適用が4月に開始される。経済的負担が一定程度軽減されるが、病院選びの基準となる治療方針や妊娠・出産率など詳しい実績の開示は不十分なまま。インターネット上の口コミなどを頼りに転院を繰り返す当事者は多く、費用がかさむ要因にもなっている。
 「検索しては情報の海に溺れるような感じだった」。東京都の30代女性会社員はこう語る。産婦人科を初めて受診してから約5年後の2020年に出産したが、それまで転院を3回繰り返し、費用は計約550万円に上った。
 頼ったのはネットの口コミなど。「客観的指標がなく、確信を持てないで病院を決めていた」と明かし、「出産できたから良かったけど、結果論でしかない」と言い切る。
 神奈川県の30代女性は妊娠までに4カ所の専門クリニックに通い、ブログにつづられた体験談に目を通した。「口コミだと大手医療機関以外の情報が得られなかった。駄目だったら次というわけにはいかない。まっとうな医療が受けたいだけなのに」と訴える。
 厚生労働省は昨年4月から医療機関に対して体外受精を含む治療別の年間実施件数などの報告を求めており、情報は各自治体ホームページで公開されている。ただ、治療法ごとの成績開示は任意にとどまる。
 転院を2回経験した都内在住の別の30代女性は「一番知りたい治療方針、実績などが任意。患者から情報をたぐり寄せないといけない」と話す。
 女性3人は、「遠回りした」と口をそろえる。SNSを通じて不妊治療の問題意識を共有し、数年前にグループを結成。まず保険適用を求める活動を始めた。昨年は踏み込んだ治療実績の開示を求めて署名活動を始めたところ、5194筆が集まり、11月に野田聖子少子化担当相に渡した。
 不妊治療を支援するNPO法人「Fine」(東京)が昨年5~6月に約700人を対象に行ったアンケート調査によると、94%が治療成績の開示を望み、うち6割が「病院を比較検討したい」と回答した。松本亜樹子理事長は「情報開示は病院ごとにばらつきがあり、当事者は迷っている。質のチェックや情報公開を担う第三者機関が必要だ」と話している。 (C)時事通信社