国立がん研究センターがん対策研究所予防関連プロジェクトの研究グループは、多目的コホート研究JPHCのデータを用いて低炭水化物食とがん罹患との関連を調べた結果をCancer Sci2021年11月25日オンライン版)に発表。炭水化物の割合が低い場合、がん罹患リスクが高かったと報告した。この関係は脂質および蛋白質の摂取源が動物性食品の場合、より顕著であった。

低炭水化物スコアを用いてがん罹患リスクを検証

 食事における三大栄養素(炭水化物、蛋白質、脂質)の摂取割合は、炭水化物が少なければ、相対的に蛋白質と脂質が多くなる関係にある。これまでアジアにおいて、低炭水化物食とがん罹患リスクとの関連を調べた研究はなかったことから、研究グループは炭水化物、蛋白質、脂質の摂取量に基づき算出する低炭水化物スコア(N Engl J Med 2006; 355: 1991-2002)を用いて、将来のがん罹患リスク(全部位、部位別)を調査した。

 対象は、1995年および98年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2019年現在)管内に在住していた45~74歳の男女で、アンケートに回答したがんの既往歴がない9万171例とした。

 低炭水化物スコアとは、食物摂取頻度調査票(FFQ)の結果に基づき1日のエネルギー摂取量を推定し、炭水化物、蛋白質、脂質からのエネルギー摂取の割合を算出。炭水化物からのエネルギー摂取の割合が高いほど低スコア(10~0点)、脂質と蛋白質からの割合が高いほど高いスコアを与え(それぞれ0~10点)、それらを合計して評価するもの。スコアが高いほどエネルギー摂取において炭水化物の摂取量が相対的に少なく、脂質や蛋白質の摂取量が相対的に多いことを意味する。

 さらに、脂質と蛋白質の摂取源を動物性または植物性食品に分け、動物性食品に基づく低炭水化物スコアと、植物性食品に基づく低炭水化物スコアを算出した。低炭水化物スコアで五分位に分け(低い順にQ1群、Q2群、Q3群、Q4群、Q5群)、低炭水化物スコアが最も低いQ1群を参照として、他の群における将来の全部位および部位別のがん罹患リスクを調査した。

蛋白質・脂質の摂取源が植物性食品では、リスク上昇は認めず

 中央値で17年間の追跡期間中に、1万5,203例ががんを罹患した。Q1群に対する他の群におけるがん罹患のハザード比(HR)を算出した。その結果、低炭水化物スコアが高いほど、全部位および直腸がんの罹患リスクは高い傾向が(順に傾向性のP=0.012、傾向性のP=0.034、図1-左、右)、胃がんの罹患リスクは低い傾向がそれぞれ認められた(傾向性のP=0.006、図1-中央)。

図1. 低炭水化物スコアとがん罹患リスク

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 続いて、蛋白質および脂質の摂取源を動物性または植物性食品に分けてHRを算出すると、動物性食品に基づく低炭水化物スコアが高いほど全部位、大腸がん、直腸がん、肺がんの罹患リスクが高く、胃がんの罹患リスクは低い傾向が認められた(図2)。

図2. 動物性食品に基づく低炭水化物スコアとがん罹患リスク

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(図1、2とも国立がん研究センターがん対策研究所プレスリリース) 

 一方で、植物性食品に基づく場合は、低炭水化物スコアが高いほど胃がん(P=0.031)の罹患リスクが低い傾向にあったものの(傾向性のP=0.031)、罹患リスクが高まる傾向を示したがん種はなかった。

 以上の結果を踏まえ、研究グループは「低炭水化物スコアが高いほど、全部位のがん罹患リスクが高いことが示された。この結果は、脂質や蛋白質の摂取源が動物性食品か、植物性食品かによって異なっていた」とまとめた。

 動物性食品に基づく低炭水化物スコアが高いほど全がん、大腸がん肺がんのリスクが高かった結果については、「動物性食品由来の蛋白質や脂肪により、腫瘍促進因子であるインスリン様成長因子(IGF)-1の分泌量が増加し、それに伴い腫瘍細胞の増殖が促進された可能性や、赤肉や加工肉の調理・加工の過程で生じるヘテロサイケリックアミン、ポリサイケリック芳香族炭化水素、N-ニトロソ化合物などの発がん物質が生成されたことなどが発がんにつながった可能性がある」と考察している。

 また、蛋白質や脂質の摂取源となる食品にかかわらず、低炭水化物スコアが高いほど胃がんの罹患リスクが低下したことについて、①澱粉質の多い食事内容により胃酸の分泌が減少し、胃がんのリスクとなるピロリ菌の増殖や成長が促進される、②胃酸に含まれる成分がN-ニトロソ化合物の形成を阻害し、発がん性物質から胃を守る働きがある-ことが関連した可能性を挙げた。その上で、「低炭水化物食とがん罹患リスクとの関連については、これまで研究数が少なく一貫した見解は得られていないため、今後さらなる研究が必要」と考察している。

編集部