治療抵抗性統合失調症治療薬クロザピン(商品名クロザリル)についてクロザリル適正使用委員会(委員長=山内俊雄氏)は1月24日、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)の基準緩和を求める要望書への回答を日本精神神経学会など関連4学会に連絡。同学会などが2月4日までに公式サイトで公表した。クロザピンは、治療抵抗性統合失調症への適応を有する国内で使用できる唯一の治療薬だが、無顆粒球症や血糖値上昇といった副作用の発現リスクがあり、頻回なモニタリングが義務付けられている。そのため、必要な患者に必ずしも投与されていなかった。(関連記事「添付文書改訂で進むかクロザピンの普及」)

海外では安全性の再検討を重ね基準を緩和

 クロザピンは、治療抵抗性統合失調症治療薬を適応症として2009年に日本でようやく承認された。日本精神神経学会などによると、昨年(2021年)10月20日時点で国内の投与患者は約1万2,600例と、海外に比べ極めて少ないという。

 その理由として、①無顆粒球症という致死的な副作用発現に備えるため、処方は投与基準を満たす医療者と医療機関に限定、②CPMSの基準が厳格―であることが挙げられ、クロザピンを必要とする患者に十分な投与ができず、日本では海外に比べ治療抵抗性統合失調症における多剤併用の割合が60~80%と高い。

 ちなみに海外では、クロザピンの安全性に関する検討を繰り返し行い、CPMSの基準が見直されている。

 そのため日本精神神経学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本神経精神薬理学会、日本統合失調症学会は合同で昨年10月、クロザリル適正使用委員会宛にCPMS基準緩和に関する要望書を提出していた。

「緊急時は24時間の患者対応が可能」の一文を撤廃

 4学会合同の要望書を受け、同委員会は今回、①登録通院医療機関の登録要件、②血糖値およびHbA1c値の測定頻度、③両検査の測定間隔―を緩和するとした。

 ①については、要件の1つであった「緊急時は、24時間の患者対応が可能であること」の文言が撤廃される。CPMS登録医療機関の要件には、これを求める記載がなく、他の医療機関との連携も可とする条件に含まれると考えられたためだ。

 ②に関しては、CPMS基準では血糖値、HbA1c値の測定頻度として3つのプロトコル(A:血糖値、HbA1c値を投与4週後、12週後に測定。以降、12週ごと、B:いずれも4週ごとに測定、C:血糖値は2週間ごと、HbA1c値4週ごとに測定)が設定されている。今回、BおよびCに次の文章が追記された。

  • B :Aの検査間隔に変更する場合は、糖尿病内科医の指示の下に行う
  • C :症状が安定しB、Aの検査間隔に変更する場合は、糖尿病内科医の指示の下で行う

 要望書では、プロトコルCはコンサルトを受ける基準であり、検査の頻度や治療方針は糖尿病専門医が決めるべきであること、糖尿病患者の通院治療は一般的に4~12週で、2週ごとの検査は行われていないことを指摘していた。また、安定した糖尿病患者の通院は4~12週間隔であるとの糖尿病専門医の意見およびデータも踏まえた。

糖尿病専門医との協議でプロトコルが変更可能に

 ③の血糖値およびHbA1c値の測定間隔については、プロトコルBおよびCの対象患者では糖尿病専門医とクロザピンの継続投与の可否および、検査間隔を協議した上で、BまたはAに変更できる。変更する場合は、診療録に加えモニタリングシステムのeCPMSにも記録する。

 日本でクロザピンが承認された当時、安全性を最重視したモニタリングシステムとしてCPMSがつくられた。しかし厳格な基準であったため、医療機関と患者の双方に検査や受診の負担が大きく、同薬の恩恵が受けられない患者が多く存在することになった。

 今回の基準緩和に伴い、同薬の適正使用が継続されるとともに必要とする患者への投与が進むことが期待される。

(田上玲子)