新型コロナウイルスの感染第6波が猛威を振るう中、政府の対応に首長や専門家から不満が漏れ始めた。1日当たりの死者数が過去最多水準に達したにもかかわらず、岸田文雄首相の動きが鈍いと映るためだ。野党からも責任を厳しく問う声が出ている。
 「変異株『オミクロン株』の特徴に応じた全般的な方針の明確化をお願いしたい」。東京都の小池百合子知事は9日、首相官邸に乗り込むと、首相にこう直談判した。言外ににじむのは「首相は第6波対処の大方針すら示していない」(関係者)との不満だ。
 小池氏は8日の記者会見で、首相が3回目のワクチン接種加速に向けて掲げた1日100万回の目標について「今の感染拡大に間に合っていない。スピード感の違いがストレスフルだ」と酷評。9日の会談後は、記者団に「率直にいろんな観点から意見交換した」と説明しており、首相にこうしたいら立ちを伝えた可能性もある。
 オミクロン株をめぐり、政府は「重症化しにくい」との見方を示すが、第6波の状況は深刻だ。9日には162人の死亡が確認され、第5波のピーク時の89人を大きく超えた。神戸市が公表漏れをまとめて報告した昨年5月18日の216人を除けば過去最悪の数字だ。
 感染収束の道筋はいまだ見通せない。首相は9日、記者団に「感染拡大のスピードは明らかに落ちている」と強調したが、政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「高止まり」する可能性を指摘。オミクロン株の別系統「BA.2」の出現を踏まえ、「最悪の場合は上がることも考えられる」と分析している。
 知事らが首相に矛先を向けるのは、こうした「有事」への対応が不十分とみるからだ。小池氏に続いて首相とオンラインで協議した大阪府の吉村洋文知事も、小池氏と歩調を合わせるように「オミクロン株の特徴に合わせた国としての大きな方針が必要ではないか」と求めた。
 分科会の関係者からも「政府の方針がよく見えない。首相は記者会見を開いた方がいい」との声が上がる。首相は緊急事態宣言について「検討していない」と繰り返しているが、専門家の一人は「早く出した方がいい」と言い切った。
 野党は批判を強める。立憲民主党の柚木道義氏は9日の衆院予算委員会で、首相が3回目接種を急いでいれば「死者最多という状況は防げたのではないか」と追及。同党の閣僚経験者は「これほど死者を増やした首相は万死に値する。今後、退陣を迫ることも考えられる」と語った。 (C)時事通信社