鎮痛薬や頭痛薬の使用過多を起因とする薬物乱用頭痛。これまで、日本における有病率は明らかにされていないという。糸魚川総合病院(新潟県)脳神経外科医長の勝木将人氏らは、糸魚川市の生産年齢人口(15〜64歳)を対象とする横断研究で薬物乱用頭痛の有病率を調査。結果をNeurol Sci2022年1月19日オンライン版)に報告した。

新型コロナワクチン接種の待機時間を利用してアンケートを実施

 複数の先行研究により、日本における片頭痛の有病率は6〜9%程度、緊張型頭痛の有病率は15〜20%程度であることが報告されている。首都圏の4施設(大学病院、デパート、保険会社、コンピューター製造企業)の男女約8,000人の調査では、有病率はそれぞれ8.9%、14.7%だった(Intern Med 2014; 53: 683-689)。同調査では、頭痛のために仕事を休むなどの影響があるにもかかわらず片頭痛患者の59.4%、緊張型頭痛患者の79.7%が医師に相談していないことや、それぞれ60.8%、48.1%が市販薬で対処していることが示されている。

 すなわち、頭痛患者の多くは医療機関を受診せず市販の鎮痛薬などにより独自の疼痛管理を行っており、鎮痛薬の使用過多に伴う薬物乱用頭痛の増加が危惧される。

 勝木氏らは、糸魚川市の大規模接種会場2施設で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの1回目接種を受けた15〜64歳の男女を対象に、接種後の待機時間を利用して薬物乱用頭痛に関するアンケートを実施。5,865人(男性2,981人、女性2,883人)から有効回答を得た。

 薬物乱用頭痛は1カ月当たり15日以上の頭痛を有し、市販薬を主とした鎮痛薬の15日以上の使用またはトリプタン系薬の10日以上の使用がある者とした。

有病率は2.3%で海外の既報と同等

 調査の結果、41.1%が過去3カ月以内に頭痛を有し、薬物乱用頭痛は2.3%(136人)が該当した。海外の報告による有病率は1〜2%であり(Lancet Neurol 2019; 18: 891-902)、ほぼ同等だった。

 薬物乱用頭痛とされた集団の年齢中央値は43歳(四分位範囲36〜49歳)、女性が80.1%だった。頭痛頻度の中央値は1カ月当たり16日(同15〜20日)で、19.2%が片頭痛も有していた。頭痛が9〜24時間継続する者は44.5%だった。

 急性期の治療薬投与頻度の中央値は1カ月当たり15日(四分位範囲10〜20日)で、66.2%が鎮痛薬を併用していた(非オピオイド鎮痛薬44.2%、オピオイド鎮痛薬1.5%)。トリプタン系薬の併用率は3.7%だった。

 また、7.3%は予防薬を投与していた。内訳は漢方薬が4.4%と最も多く、降圧薬が2.9%、筋緊張改善薬(エペリゾン)が2.2%、抗不安薬および低用量ピルが0.7%だった。

 薬物乱用以外の頭痛と比べ、薬物乱用頭痛を有する者では頭痛および片頭痛の頻度、女性、中等度〜重度の頭痛、4日以上にわたり頭痛が継続する割合、急性期治療時の鎮痛薬併用、予防薬投与の割合が有意に多く、身体活動に伴う頭痛の悪化や回避、悪心/嘔気または羞明/聴覚過敏といった症状が有意に多かった。

薬物乱用頭痛には3つのサブグループ

 さらに、勝木氏らは8つの要素(年齢、性、頭痛の頻度、片頭痛の有無、頭痛の持続期間、併用鎮痛薬、急性期の治療薬投与の頻度、予防薬投与の有無)によるクラスター分析を実施。薬物乱用頭痛の典型例を、①中頻度で急性期の治療薬を使用する若年者、②中頻度で急性期の治療薬を使用する中高年、③高頻度に急性期の治療薬を使用する高齢者―に分類した。

 ①は働き始めたばかりで若年労働者特有のストレスを抱えている若者、②は仕事や育児に追われている中高年、③は軽度の認知機能障害や不安を有し、頻繁に鎮痛薬を使用する高齢者が想定できるという。また、高齢者は他の疼痛症候群、睡眠関連障害、胃腸障害などの併存症を有する可能性が高く、片頭痛の悪化から薬物乱用頭痛の発症につながる恐れがある。

 以上から、同氏は「薬物乱用頭痛の有病率に関する日本で初めての検討であり、海外の既報と同程度であった。また、発症の背景を考える上で、年齢および急性期の治療薬使用頻度を踏まえたサブグループ分類は重要な視点となる可能性がある」と結論。「日本における大規模研究ならびに薬物乱用頭痛の啓発が求められる」と展望している。

(安部重範)