新規糖尿病治療薬tirzepatideは、2種のインクレチン(GIPおよびGLP-1)に作用する週1回投与のGIP/GLP-1受容体作動薬である。ドイツ・Gemeinschaftspraxis für innere Medizin und DiabetologieのDominik Dahl氏らは、第Ⅲ相ランダム化比較試験SURPASS-5により、インスリングラルギンを投与されている2型糖尿病患者に対するtirzepatideの上乗せ効果をプラセボと比較。結果をJAMA2022; 327: 534-545)に報告した。

インスリングラルギンに3用量で上乗せ

 SURPASSプログラムでは、tirzepatideとプラセボを比較したSURPASS-1試験(関連記事「デュアル・インクレチンの作用を臨床で証明」)、同薬とGLP-1受容体作動薬セマグルチドを比較したSURPASS-2試験(関連記事「新クラスの治療薬でHbA1cが有意に改善」「糖尿病 TOPICS 2021 No.1」)、同薬とインスリンデグルデクを比較したSURPASS-3試験、同薬とインスリングラルギンを比較したSURPASS-4試験などがある(関連記事「新規糖尿病治療薬tirzepatideがインスリングラルギンに対する優越性示す」)。

 今回のSURPASS-5試験では、メトホルミン投与の有無にかかわらず、インスリングラルギンによる治療を行っても血糖管理不良の2型糖尿病患者を対象に、3用量のtirzepatide上乗せの有効性と安全性をプラセボと比較した。

 2019年8月〜20年3月に、日本を含む8カ国45施設で475例を登録し、インスリングラルギンにtirzepatide 5mg、10mg、15mgの週1回投与を40週間にわたって上乗せする群〔5mg群(116例)、10mg群(119例)、15mg(120例)〕またはプラセボを上乗せするプラセボ群(120例)に1:1:1:1でランダムに割り付けた。tirzepatideは2.5mg/週で開始し、割り当てられた用量に達するまで4週間ごとに2.5mgずつ増量した。インスリングラルギンは1日1回投与し、5〜40週に行う自己血糖測定により得られた血糖値に応じて用量を調節した(目標空腹時血糖値100mg/dL未満)。

 患者の年齢は60.6歳、BMIは33.4、糖尿病罹病期間は13.3年、HbA1cは8.31(いずれも平均値)。女性が44%で、インスリングラルギン投与量の中央値は30.0IU/日、メトホルミンは82.9%が投与していた。4群の背景因子に差はなかった。

 主要評価項目は10mg群、15mg群の40週時点におけるベースラインからのHbA1cの変化量。主要な副次評価項目は5mg群におけるHbA1cの変化量、各治療群の体重の変化量、空腹時血糖の変化量、HbA1c値7.0未満の達成率、HbA1c値5.7未満達成率などだった。

いずれの用量もHbA1cを有意に低下

 40週時点におけるベースラインからのHBA1cの変化量は、10mg群が−2.40%、15mg群が−2.34%で、プラセボ群の−0.86%と比べいずれも有意に低下していた(プラセボ群との差、それぞれ−1.53%ポイント、−1.47%ポイント、全てP<0.001、)。5mg群は−2.11%で、プラセボ群と比べて有意に低下していた(プラセボ群との差−1.24%ポイント、P<0.001)。

図. HbA1cの変化量

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JAMA 2022; 327: 534-545)

 体重の変化量は、5mg群が−5.4kg、10mg群が−7.5kg、15mg群が−8.8kgで、いずれもプラセボ群の1.6kgと比べて有意に減少していた(プラセボ群との差、それぞれ−7.1kg、−9.1kg、−10.5 mg、全てP<0.001)。

 空腹時血糖の変化量は、5mg群が−58.2mg/dL、10mg群が−64.0mg/dL、15mg群が−62.6mg/dLで、いずれもプラセボ群の−39.2mg/dLと比べて有意に低下していた(プラセボ群との差、それぞれ−19.0mg/dL、−24.9mg/dL、−23.4mg/dL、全てP<0.001)。

 HbA1c値7.0未満の達成率は、5mg群が87.3%、10mg群が89.6%、15mg群が84.7%で、いずれもプラセボ群の34.5%と比べて有意に高かった(全てP<0.001)。

 HbA1c値5.7未満の達成率は、5mg群が24.4%、10mg群が41.6%、15mg群が49.6%で、いずれもプラセボ群の2.7%と比べて有意に高かった(全てP<0.001)。

消化器症状の有害事象が認められるも軽度〜中等度

 治療に関連する有害事象の発現率は、プラセボ群の67.5%に対して5mg群は73.3%、10mg群は68.1%、15mg群は78.3%だった。頻度が高かったものは、下痢(それぞれ10.0%、12.1%、12.6%、20.8%)、悪心(2.5%、12.9%、17.6%、18.3%)、食欲減退(1.7%、6.9%、12.6%、14.2%)、嘔吐(2.5%、6.9%、7.6%、12.5%)などの消化器症状で、多くは軽度〜中等度だった。

 死亡例は認められず、重篤な有害事象の発現率は、プラセボ群の8.3%に対して5mg群は7.8%、10mg群は10.9%、15mg群は7.5%だった。低血糖症(血糖値54mg/dL未満)の割合はそれぞれ12.5%、15.5%、19.3%、14.2%だった。

 Dahl氏らは「メトホルミンおよびインスリングラルギン投与で血糖管理が不良な2型糖尿病患者において、40週間のtirzepatideの上乗せはHbA1c値を有意に改善し、忍容性にも問題はなかった」と結論している。

(安部重範)