【シドニー時事】南太平洋の島国トンガで海底火山が噴火して15日で1カ月となる。世界銀行の試算で被害額は推計9040万ドル(約104億円)に上り、被災者支援に加え、新型コロナウイルスの感染抑制が新たな課題に浮上してきた。一方、太平洋諸国で影響力拡大中の中国が支援で攻勢をかけている。
 ◇無人の通り
 世銀は14日、被害額がトンガの国内総生産(GDP)の約18.5%に相当すると発表した。住宅や建物、インフラ、農業などが打撃を受けたが、観光業など現在も続く被害は含まれておらず「経済全体の損失は大きく増える見込み」と分析した。
 トンガでは2月、変異株「オミクロン株」の感染が急拡大。14日時点で感染者138人が施設で隔離されている。ロックダウン(都市封鎖)が導入され、首都ヌクアロファのあるトンガタプ島などでは20日まで続く予定だ。
 現地で対応に当たる世界保健機関(WHO)職員、瀬戸屋雄太郎さんは「火曜日と金曜日は買い物が許されているが、普段は通りには誰もいない」と島の様子を語った。一軒の家に大家族が暮らすことも多いため「対策の難しさがある」と指摘する。トンガならではの対策が必要だ。
 港湾労働者らが多数、感染者や濃厚接触者となったため、荷役作業に時間がかかっている。津波などにより被害を受けた家の建て直しもロックダウンで進んでいない。他方でワクチン接種率は約9割まで高まり、3回目の接種も順調だ。瀬戸屋さんは「緩やかな行動制限にするのか政府は岐路に立っている」と述べた。
 ◇債務のわな
 中国は開発援助の一環で、総額1150万ドル(約13億円)相当の重機一式をトンガに送った。フアカバメイリク首相は11日の式典で「(復興に向け)時宜を得た引き渡しだ」と強調した。重機は被災前に中国から発送されていたが、救援物資にとどまらない支援として目立っている。
 中国はトンガに融資を駆使して、関係をつなぎ留めている。ただ、トンガは対外債務全体の3分の2に相当する1億ドル(約115億円)強が中国向けとされ、専門家からは過度な中国依存による「債務のわな」を警戒する見方も根強い。
 一方、日本からは、火山灰除去用具など支援物資を積んだ海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」が9日、トンガに入港。自衛隊の輸送機も投入された。
 オーストラリアやニュージーランドも災害直後からトンガを支援している。トンガに近いフィジーを米国務長官として約37年ぶりに訪問したブリンケン長官は12日、トンガなど「太平洋諸島フォーラム(PIF)」参加国とオンラインで会議を開いた。太平洋重視の姿勢を示し、中国に対抗する構えを鮮明にした。 (C)時事通信社