日本イーライリリーは、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法の適応拡大承認を取得したサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害薬アベマシクリブについて、1月21日にメディアセミナーを開催した。同薬の特徴について、がん研究会有明病院(東京都)乳腺センター乳腺内科副部長の原文堅氏は「予後改善が期待できる一方、有害事象には注意が必要である」と述べた。座長は、同院副院長/乳腺センターセンター長の大野真司氏が務めた。

術後薬物療法で約20年ぶりの新薬

 アベマシクリブは、がん細胞のCDK4/6を阻害することで転写因子E2Fの活性を抑制し、細胞周期のG1期からS期への進行を停止させる機序を有する。2018年9月にホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんを適応症として承認されたが、今回(2021年12月)の適応拡大により、再発前の術後薬物療法としての投与も可能となった。ホルモン療法との併用下で、1回150mgを最大24カ月まで1日2回経口投与する。

 ホルモン受容体陽性乳がんは、初回診断後5年で再発率が陰性例を逆転するなど、一定の期間が経過しても再発リスクが持続するという特徴がある。従来、再発予防策としてリンパ節転移数、腫瘍グレード、腫瘍径といった危険因子に応じ術後ホルモン療法の延長などが行われてきたが、高リスク例への選択肢は限られていた。原氏は「ホルモン受容体陽性乳がんの術後薬物療法においては、2000年代にアロマターゼ阻害薬が登場して以降、より治療効果が高い新薬の登場が待望されていた」と指摘する。

下痢、間質性肺疾患、血栓症に注意

 術後薬物療法におけるアベマシクリブの有効性と安全性は、国際共同第Ⅲ相ランダム化比較試験monarchEで検証された。対象は、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性で再発高リスクの術後乳がん患者5,637例。再発高リスクは、腋窩リンパ節転移4個以上あるいは腋窩リンパ節転移1~3個かつ①腫瘍径が5cm以上、②腫瘍グレードが3以上、③Ki-67スコアが20%以上―のいずれかに該当と定義した。アベマシクリブ+ホルモン療法群とホルモン療法群に1:1でランダムに割り付け、5〜10年追跡した。

 検討の結果、主要評価項目とした無浸潤生存(iDFS)はホルモン療法群に対しアベマシクリブ+ホルモン療法群で有意な延長が認められ、2年時iDFSはそれぞれ89.6%、92.6%、3年時iDFSは82.9%、88.6%だった。主な有害事象としては、アベマシクリブ+ホルモン療法群で下痢が82.2%、好中球減少症が44.6%、疲労が38.4%、ホルモン療法群で関節痛が31.3%、火照りが21.0%、疲労が15.5%に認められた。頻度が高い下痢への対応として、グレード2(中等症)以上が24時間を超えて続く場合はグレード1以下に回復するまで休薬することとされた。

 フォローアップにおいては、monarchEで重篤な副作用として報告された間質性肺疾患と静脈血栓塞栓症への対応が重要となる。間質性肺疾患はグレード1(画像所見のみ)以上で投与中止、静脈血栓塞栓症はグレード2(内科的治療を要する)以上で投与中止または休薬とされた。

 以上の知見を踏まえ、原氏は「アベマシクリブ投与により、再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん患者の予後改善が期待できる」と評価。一方、同薬を用いた治療時の注意点として「下痢、間質性肺疾患、静脈血栓塞栓症といった有害事象の頻度が少なくないため、バイオマーカーによりアベマシクリブの恩恵を受けられる症例選択ができるかが課題である」と述べた。

(平山茂樹)