非アルコール性脂肪肝炎(NASH)では、心血管イベントによる死亡リスクが高まるとされる。イラン・Tehran University of Medical SciencesのShahin Merat氏らは、NASHまたは肝酵素レベル上昇例を対象にアスピリン、アトルバスタチン、ヒドロクロロチアジド、バルサルタンを含むポリピルの効果を検証した研究の結果をEur Heart J2022年1月20日オンライン版)に発表。ポリピルによる心血管疾患の抑制効果が示されたことを報告した。

対象のうち、NAFLDは40%超、NASHは20%前後

 今回の対象は、イランの住民ベースの前向きコホート研究であるGolestanコホート研究の登録者のうち、50歳超の2,400例。55:45の割合でアスピリン(81mg)、アトルバスタチン(20mg)、ヒドロクロロチアジド(12.5mg)、バルサルタン(40mg)を含有するポリピルを服用するポリピル群と経過観察のみのコントロール群にランダムに割り付けた。直近に上部消化管出血、低血圧、その他重篤な疾患を有する例などを除外し、最終的に同意が得られかつ組み入れ基準を満たしたのはポリピル群787例、コントロール群721例であった。対象には肝疾患の評価を行い、超音波検査と肝硬度測定(LSM)により①非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、②これに加え、ALTレベルが上昇例(男性30IU/L、女性20IU/L)はNASH-と推定した。

 主要評価項目は致死的心筋梗塞、突然死、心不全の新規発症、冠動脈血管再建術、致死性および非致死性脳卒中、急性冠動脈疾患による入院と定義した主要心血管イベント(MACE)の発生。副次評価項目として、全死亡、主要評価項目の個別イベント、血圧変化などの他、安全性も評価した。  

 主な患者背景は、平均年齢がポリピル群58.4歳、コントロール群59.4歳、男性がそれぞれ50.3%、52.2%で、その他、喫煙歴が18.4%、23.9%、心血管疾患(CVD)の基礎疾患保有率が18.3%、13.5%、コレステロールの中央値が217.0mg/dL、206.0mg/dL、NAFLDと推定できたのは41.1%、42.5%、NASHは19.2%、23.8%、ALT上昇例は29.7%、35.7%、LSMが7kPa超は10.1%、9.3%だった。

主要評価項目のRRは0.61、ポリピル群で有意に良好  

 解析の結果、主要評価項目のMACEの発生はコントロール群の11.9%に対しポリピル群では8.0%、喫煙歴、コレステロール値、CVDの基礎疾患を調整後のリスク比(RR)は0.61(95%CI 0.44~0.83)と有意に良好であった(P=0.002)。非致死的CVD(RR 0.68、95%CI 0.48~0.97、P=0.032)、致死的CVD(同0.42、0.19~0.92、P=0.030)、全死亡(同0.55、0.34~0.88、P=0.013)についてもポリビル群でリスクは有意に低下していた。

 また、NAFLDの集団(調整RR 0.55、95%CI 0.35~0.87)、非NAFLDの集団(同0.71、0.45~1.11)、ALTレベルの上昇集団(同0.51、0.29~0.91)、非上昇集団(同0.64、0.44~0.94)、NASH有りの集団(同0.35、0.17~0.74)、なしの集団(同0.73、0.49~1.00)、LSMが7kPa以上の集団(同0.45、0.18~1.15)、7kPa未満の集団(同0.38~0.82)のいずれにおいても、コントロール群と比べポリピル群でMACE発生のリスクは低い傾向にあり、肝疾患の集団および肝機能の指標が悪化している集団でよりその傾向が強かった。  

 肝酵素および肝硬度の指標を見ると、NASH有りの集団において、コントロール群と比べたポリピル群のベースライン時からのALT平均変化量(30カ月時:3.3IU/L、95%CI 0.1~6.6IU/L、 60カ月時:1.9IU/L 、95%CI −1.3~4.9IU/L)が大きかったことを除くと、両群間で差は認められなかった。また、有害事象の発生は両群で同等だった。  

 以上の結果を踏まえ、Merat氏は「ポリピルは、脂肪肝やNASHにおいても安全でMACEの発生を抑制することが示された。こうした症例では、CVDの予防は重要な治療目標となる」と述べている。

(編集部)