新型コロナウイルスの感染第6波が猛威を振るう中、岸田文雄首相が3回目のワクチン接種の加速に向け、「1日100万回」の目標達成に躍起となっている。地方自治体間の競争を促すため、15日にはそれぞれの接種率などを公表する取り組みをスタートさせた。接種が進まなければ政権への批判が強まりかねないとの焦りが背景にある。
 首相は15日の政府・与党連絡会議で、3回目接種について「VRS(ワクチン接種記録システム)への入力ベースで前日からの増加回数が15日に約110万回となった」と述べ、平均して1日100万回のペース達成は近づいているとの認識を示した。その上で「私自身が陣頭指揮を執り、全ての手段をフル稼働させる」と強調した。
 現在の接種ルートは自治体の接種、自衛隊の大規模接種、職域接種の三つだ。このうち、スタートが遅れていた職域接種も14日から本格化した。ただ、首相が100万回の目標をぶち上げた7日以降、接種数の上昇ペースは鈍く、直近1週間の平均は1日当たり67万回超にとどまる。自衛隊の大規模接種会場は東京、大阪とも予約枠の空きが目立つ。
 自治体の取り組みを促すため、首相官邸が15日に始めたのが都道府県や政令市ごとの接種回数・率の公表だ。進展を比較できるようにし、遅れている自治体をせき立てるのが狙い。官邸のホームページに毎日掲載する。
 堀内詔子ワクチン担当相は遅れ気味の自治体の首長と会談を重ねる。15日には接種率が7.8%にとどまる神奈川県の黒岩祐治知事に会い、接種会場拡充などの協力を要請した。
 自治体の鈍さの他に接種停滞の要因とみられているのが、重症化率の低い変異株「オミクロン株」への国民の油断や米モデルナ製ワクチンの副反応への懸念だ。その払拭(ふっしょく)も課題となるため、各閣僚は自ら率先してモデルナ製を接種し、ツイッターなどで発信している。
 官邸は菅内閣でワクチン担当を務めた河野太郎自民党広報本部長にも依頼し、堀内氏と2人でモデルナ製の有効性と安全性をアピールする動画を制作。堀内氏は12日夜、河野氏のネット番組に出演し、「3回目は発熱などの出現率が少ない」と訴えた。
 首相は連日、関係省庁のワクチン担当幹部と「100万回必達会議」を開き、ハッパを掛ける。周辺には「必ず100万回にする。毎日数字を見る」と語っているという。「口にした目標を達成できなければ政権への打撃は大きい」(政府関係者)だけに、正念場を迎えている。 (C)時事通信社