米・Washington University School of MedicineのRe-I Chin氏らは、切除可能な局所進行直腸がんに対する短期放射線照射+トータルネオアジュバント療法(SCRT-TNT)+直腸間膜全切除術(TME)の費用効果を、従来の長期化学放射線療法(LCCRT)+TMEと比較。SCRT-TNT+TMEは低コストかつ質調整生存年(QALY)を改善したことをJAMA Netw Open2022; 5: e2146312)に報告した。

マルコフモデルにより医療経済面からSCRT-TNT+TMEを評価

 SCRT-TNT+TMEは、術前の腫瘍縮小、遠隔転移率の低減、化学療法アドヒアランスの改善が期待される新たな治療レジメンであり、第Ⅲ相臨床試験では従来のLCCRT+TMEと比べ、完全奏効率の高さと疾患関連の治療失敗率および遠隔転移率の低さが示されている。しかし、医療経済面からSCRT-TNT+TMEとLCCRT+TMEを比較した研究はほとんどなかった。

 Chin氏らは、新規の局所進行直腸がんでSCRT-TNTまたはLCCRT(補助化学療法の有無は問わない)を実施後にTMEを行う患者を対象とした意思決定分析モデルを構築。計画期間は5年とし、疾患進行と治療後3カ月ごとの生存率をマルコフモデルによりモデル化した。過去のランダム化比較試験の結果などから、各治療における局所再発率、累積遠隔転移率、全生存率を設定した。費用は2020年のメディケアの給付から算出した。

 費用効果は、増分費用効果比(ICER)と純金銭便益により評価した。有効性はQALYの増大と定義。費用とQALYの割引率はいずれも年3%とし、支払い意思額の閾値を1QALY当たり5万ドルとした。

1QALY当たりの増分費用効果比は-14万ドル

 検討の結果、総費用はLCCRT群の5万4,827ドルに対してSCRT-TNT群は4万1,355ドルと低下し、QALYはそれぞれ2.12年、2.21年とSCRT-TNT群で増大した。

 ICERは1QALY当たり-14万1,256ドル77セントとなり、SCRT-TNT+TMEはLCCRT+TMEと比べ費用を削減でき、かつ有効性の高い治療法であることが示された。純金銭便益は、SCRT-TNT群が6万9,300ドル、LCCRT群が5万1,060ドルだった。

 さらにChin氏らは、①LCCRT群の全例に補助化学療法を施行、②局所再発率と遠隔転移率がSCRT-TNT群とLCCRT群で同様―と仮定した場合の解析も実施。この仮定においてもSCRT-TNT群の総費用は低下し、QALYはLCCRT群の2.13に対しSCRT-TNT群では2.14だった。

 二元感度分析において1QALY当たりの支払い意思額の閾値を10万ドルから15万ドルに変更しても結果は同じだった。

 同氏らは「意思決定分析モデルにより、SCRT-TNT+TMEは従来のLCCRT+TMEと比べて費用を抑制しQALYを改善することが示唆された」と結論。今回のデータは、局所進行直腸がんのマネジメントにおいて、SCRT-TNTが費用効果の面からも新たな治療パラダイムとなることを支持している。

(小路浩史)