2月4日、第24回冬季五輪北京大会が開幕した。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株オミクロン株が猛威を振るう中、厳格な感染対策が講じられているといわれるが、競技会場や選手村での感染拡大も懸念されている。また、金メダル候補だった選手が相次いでコロナ陽性により欠場するなどの影響も出ている。そうした中、米・スタンフォード大学のEmily A. Schultz氏らは、全米大学体育協会(NCAA)に参加する12大学の学生アスリートおよび一般学生が対象の横断研究で、SARS-CoV-2検査のデータ(それぞれ約55万件と約350件)を解析。その結果、学生アスリートにおける検査陽性率は多くの大学で一般学生を下回っていたとの結果を、JAMA Netw Open(2022; 5: e2147805 )に発表した。同氏らは「コロナ下でも、学生競技は安全に開催できる可能性が示唆された」としている。

学生アスリート約55万件と一般学生約350万件の検査データを解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行当初、感染拡大への懸念からプロ・アマを問わずスポーツ活動は広く中止を余儀なくされたが、その後、各競技団体などが感染対策をまとめ、再開するに至っている。しかし競技場内だけでなく、移動やトレーニング、食事、共同生活といった学生アスリートの環境下における感染リスクの詳細は明らかでない。

 Schultz氏らは、これまで学生アスリートと一般学生のSARS-CoV-2検査陽性率を比較した研究が行われなかった点に着目。NCAA参加大学が公表している抗原検査やPCR検査の結果に基づくSARS-CoV-2検査データを用い、学生アスリートと一般学生の検査陽性率を比較し、競技参加の有無による感染リスクとの関連について検討した。

 今回の横断研究では、NCAA 1部(Division I)に参加する強豪校65校が公表しているSARS-CoV-2検査データから2020~21年度の学生アスリートの検査データを収集した。2020年秋のアメリカンフットボールシーズンを含む4カ月以上にわたるデータを解析対象とし、学生アスリートの十分な検査データを収集できた大学については、学部生に限った集団またはアスリートの検査データを差し引いた学生集団のデータを一般学生のデータとして扱った。最終的に、解析に十分なデータを収集しえた12校から報告された学生アスリート計55万5,372件、一般学生計348万2,845件のSARS-CoV-2検査データを解析した。

12校中9校で学生アスリートの検査陽性率は有意に低い

 その結果、12校中9校では学生アスリートの検査陽性率が一般学生と比べて有意に低かった(アーカンソー大学:0.01% vs. 3.52%、ミネソタ大学:0.63% vs. 5.96%、ペンシルべニア州立大学:0.74% vs. 6.58%、クレムソン大学:0.40% vs. 1.88%、ルイビル大学:0.75% vs. 3.05%、パデュー大学:0.79% vs. 2.97%、ミシガン大学:0.40% vs. 1.12%、イリノイ大学:0.17% vs. 0.40%、バージニア大学:0.64% vs. 1.04%、全てP<0.001)。

 これら9校における検査陽性率の中央値(範囲)は、学生アスリートでは0.46%(0.01~0.79%)、一般学生では1.04%(0.40~6.58%)だった。残る3校のうち2校では、検査陽性率に有意差は見られず、学生アスリートで有意に高かったのはスタンフォード大学1校だけだった(0.20% vs. 0.05%、P<0.001)。

 全体の陽性検査件数と陽性率は、学生アスリートでは2,425件(陽性率0.44%)、一般学生では3万567件(同0.88%)で、一般学生に対する学生アスリートにおける検査陽性の相対リスクは0.50(95%CI 0.48~0.52、P<0.001)だった。

学生アスリートの検査陽性率に学校間で差なし

 学生アスリートと一般学生のSARS-CoV-2検査頻度には各校でばらつきが見られたため、一般学生に対し毎週または週2回の定期的な検査を実施している4校のデータを抽出しあらためて解析。一般学生に対する学生アスリートの検査陽性の相対リスクは0.61(同0.55~0.67、P<0.001)だった。

 これら4校の間で、学生アスリートの検査陽性率に有意差はなかったが、全体の一般学生の検査陽性率にはスタンフォード大学の0.05%(27万1,862件中133件)からペンシルベニア州立大学の6.58%(3万2,336件中2,129件)まで大きなばらつきが見られた。

 Schultz氏らは研究の限界点として、①解析対象が12校に限られる、②公表データに選択バイアスが存在する可能性がある、③検査頻度が学校間や学生集団によって異なる-などを指摘。その上で、「今回の研究結果は、学生競技では参加するアスリートの感染リスクを上昇させることなく、安全に開催できる可能性を示唆するものだ」と結論している。また同氏らは「NACCと各大学が実施するサーベイランスおよび感染予防策が関与したのではないか」と考察。「現時点でSARS-CoV-2の変異株の出現やワクチン接種による影響は不明だ」と付言している。

(小谷明美)