血管内治療は一般に広範囲の急性期脳梗塞では回避されるが、Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS)1が3~5の広範囲脳梗塞を有する患者においても、通常の内科的脳梗塞治療に比べ血管内治療では発症90日後の身体機能を改善する可能性があることが示された。兵庫医科大学脳神経外科主任教授の吉村紳一氏らが、国内多施設非盲検ランダム化比較試験RESCUE-Japan LIMITの結果を国際脳卒中会議(ISC 2022、2月9~11日、ウェブ併催)で報告、詳細がN Engl J Med2022年2月9日オンライン版)に同時掲載された。

発症90日後に介助なし歩行可能が2.43倍

 同試験では、 脳主幹動脈(内頸動脈または中大脳動脈M1部)の閉塞が確認されASPECTS 3~5の広範囲脳梗塞と診断された18歳以上の患者のうち、発症前のmodified Rankin Scale(mRS)スコア2が0~1で最終健常確認時刻から6時間以内、または6~24時間以内かつMRIのFLAIR画像で早期虚血性変化が確認されない患者203例(平均年齢76歳、女性44.3%)を登録。アルテプラーゼ静注を含む通常の内科的脳梗塞治療のみを行う群(内科治療群、102例)と血管内治療を併用する群(血管内治療群、101例)に1:1でランダムに割り付けて治療した。

 主要評価項目は発症90日後のmRSスコア0~3(後遺障害がなし~中等度で介助なしの歩行が可能)とした。副次評価項目は、90日後のmRSスコアのシフト解析(良好な方向へのシフト)、48時間後の米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコア3の8ポイント以上の改善などとした。

 解析の結果、主要評価項目を達成した患者の割合は、内科治療群の12.7%に対し血管内治療群では31.0%と有意に高かった〔相対リスク(RR)2.43、95%CI 1.35~4.37、P=0.002〕。

 90日後のmRSスコアのシフト解析では、血管内治療群で転帰が良好だった(共通オッズ比2.42、95%CI 1.46~4.01)。また、48時間後に8ポイント以上のNIHSSスコア改善が見られた患者の割合は、内科治療群の8.8%に対し血管内治療群で31.0%と高かった(RR 3.51、95%CI 1.76~7.00)。

頭蓋内出血は1.85倍も症候性出血は有意差なし

 安全性の評価では、48時間以内の頭蓋内出血(症候性または無症候性)の発生率は内科治療群に比べ血管内治療群で有意に高かった(31.4% vs. 58.0%、RR 1.85、95%CI 1.33~2.58、P<0.001)。ただし、症候性頭蓋内出血に関しては有意差がなかった(4.9% vs. 9.0%、同1.84、0.64~5.29、P=0.25)。90日以内の脳梗塞再発(6.9% vs. 5.0%、同0.73、0.24~2.22、P=0.58)、7日以内の減圧開頭術施行(13.7% vs. 10.0%、同0.73、0.34~1.56、P=0.41)は2群で同等だった。

 以上を踏まえ、吉村氏らは「広範囲の虚血領域を有する急性期脳梗塞の患者において、通常の治療に比べ血管内治療では頭蓋内出血は多かったものの、発症90日後の機能的転帰が良好だった」と結論。ただし、「日本では急性期脳梗塞の診断にMRIが広く用いられているため、大部分のASPECTSは拡散強調MRIに基づいて算出された。結果の解釈に際しては、CTに基づくASPECTSとの違いを考慮すべき」と付言している。

※1 ASPECTS:スコア範囲0~10、低スコアほど脳梗塞が広範囲

※2 mRS:スコア範囲0~6、高スコアほど障害が重度

※3 NIHSS:スコア範囲0~42、高スコアほど神経症状が重症

(太田敦子)