日本を含め新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の恐れがある際のセルフチェックとして抗原検査キットを薬局で購入できる。しかし同キットで陰性判定となった場合、ユーザーがキットの説明書をどう解釈し、行動するのかは不明だった。米・Dartmouth Institute for Health Policy and Clinical PracticeのSteven Woloshin氏らは、米食品医薬品局(FDA)が承認した同キットを用いて360人を、①判定結果に関する説明書がない、②キットに説明書がある、③行動科学に基づいて作成された説明書がある―の3群に分けて判定後の行動をランダム化比較試験(RCT)で検証。陰性例のうち、②に割り付けられた群では米疾病対策センター(CDC)の勧告に従う割合が低いことが分かったと、JAMA Intern Med2022年1月31日オンライン版)に報告した。

判定前の感染リスクと判定後の行動を評価

 FDAは2020年、症状の有無にかかわらずSARS-CoV-2抗原を保有しているかを判定する家庭用自己診断キットを承認し、現在11種類のキットが市販されている。それらは30分以内に判定結果が出るものの、PCR検査に比べ感度が低い(偽陰性が多い)。したがって、陰性と判定されても濃厚接触などにより感染リスクが高い者は精査を要する。

 Woloshin氏らは、昨年(2021年)4月2~3日にインターネットで、同国在住の18歳以上のSARS-CoV-2感染リスクが高い者と低い者360人を募集した。試験では被験者に、まず自身がSARS-CoV-2ワクチンを接種していない健康なJamie(45歳、2人暮らし、在宅で仕事)として家庭用自己診断検査を受けることになった状況を想像してもらった。

 次に家庭用自己診断キットの判定結果への対応として、「対策を行わない」~「外出せず、家庭内では同居者も含め他者との接触を避ける」の5つの選択肢から1つを選んでもらった。なお、5つ目の選択肢はCDCの勧告に最も近いものである。

 その後、検査の判定結果についての説明書なし(対照群)、キットに付属するFDAによる説明書あり(認可群)、行動科学に基づいて作成した説明書あり(介入群)別に、さらに各群でリスクシナリオに基づいて、①濃厚接触および症状ともあり、②濃厚接触はあるが症状なし、③濃厚接触はないが症状あり、④濃厚接触と症状なし―が均等になるようランダムに割り付けた。対照群については、説明書をインターネットでダウンロードできるようにした。

 判定結果が陰性であった場合の説明について、認可群では症状発現や重症化する前に受診するよう勧めた。一方、介入群では、CDCの勧告に基づき検査時のリスクシナリオ別に、①は「感染と推定されるため直ちに受診」、②は「感染のリスクがあり、医療者に相談し自宅隔離。症状発現から最低10日間は他者との接触を避ける」、③は「感染のリスクがあり、医療者に相談し自宅隔離。陽性者との接触日から最低10日間他者との接触を避ける」、④は「現時点で感染なし。念のため自宅隔離」とした。 ランダム化後、被験者は家庭用自己診断キットの説明書を確認し、いずれかのリスクシナリオに基づきJamieとして調査票に回答した。

 主要評価項目は、3群における感染シナリオ別にCDCが推奨する初期対応(Jamieとして)を行わなかった人の割合とした。

説明書によっては公衆衛生上、リスクと混乱招く

 解析対象は338人〔平均年齢38歳、四分位範囲(IQR)31〜48歳、女性46%、大学卒業以上64%〕。家庭用自己診断キット使用後、陽性と判定された者の約95%(95%CI 0.92~0.97)は自宅隔離を選択した。認可群(95%CI 94~97%)および介入群(同93~98%)別に見ても、陽性例の自宅隔離の割合は同様の結果だった。

 判定結果が陰性の場合、検査前の感染確率が高いシナリオ(①~③)では、介入群に比べ認可群で適切な対応が行われていない割合が有意に高かった(14% vs. 33%、95%CI 6~31%、P=0.004)。また、対照群との比較においても認可群では適切に対応していない割合が高かった(24% vs. 33%、同-4~23%、P=0.02)。

 一方、感染確率が低い④において、不要な対応を選択する割合は介入群が22%、対照群が10%、認可群が31%で、認可群で有意に多かった(vs. 介入群:P=0.05、vs. 対照群:P=0.20)。

 今回の結果を踏まえ、Woloshin氏らは「家庭用COVID-19自己診断キットに付属する説明書を読んだユーザーの一部は、判定結果を誤って解釈するリスクがある。そのためCDCの勧告を無視して、必要な自宅隔離を行わなかったり、不要であるにもかかわらず行ったりする可能性がある」と指摘。キットの説明書を見直すことで、セルフチェックの有効性を高めるとともに公衆衛生上のリスクを回避できることを示唆している。

(田上玲子)