アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)抗体aducanumabは、米食品医薬品局(FDA)が昨年(2021年)6月7日に迅速承認した一方、日本では厚生労働省が同年12月22日の薬事食品衛生審議会医薬品第一部会で承認を見送った。高額な医療費に対する懸念や効果が限定的など、同薬に否定的な意見も多い。米・Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのMichael J. DiStefano氏らは、aducanumab承認後に行った国民調査の結果をJ Am Geriatr Soc2022年2月7日オンライン版)に発表。否定的な意見が53%を占めたと報告した。

諮問委員会に関する情報も提供

 今回の調査は、昨年6月7日のaducanumab承認後、8月25日~9月8日に実施。米国の家庭を可能な限り網羅するよう設計されたUniversity of ChicagoのパネルAmeriSpeakを用いて対象を抽出。質問票は、回答者がaducanumabやその承認の経緯を知らないことを前提に作成、1回目(ベースライン調査)の質問の後に同薬のベネフィットや経済への影響など公表されている情報を提供し、同様の質問をすることで回答状況の変化についても調査した。なお提供した情報の中には、外部有識者11人で構成されたaducanumab承認のFDA諮問委員会において、同薬の有効性を示す根拠が不足しているとして、ほぼ全会一致で承認が反対されたとの情報も含まれた。

 調査を完遂したのは35歳以上の1,025人で、男性は47.9%、年齢は35~49歳、50~64歳、65歳以上がそれぞれ30%強、白人が66.4%、世帯収入は3万ドル未満が23.3%、3万~7万4,999ドルが37.6%、7万5,000~12万4,999ドルが22.4%、12万5,000ドル以上が16.7%で、aducanumabを少しでも知っている割合は24.2%、家族にADを含む認知症患者がいる割合は42.1%、同患者の介護経験ありは20.6%だった。

8割が複数の試験で効果なければ販売中止

 調査の結果、aducanumabを少しでも知っている回答者のうち、ベースライン調査で承認に賛成したのは36%(95%CI 28~44%)、反対したのは26%(同19~33%)だった。情報提供後に承認に賛成したのは18%(同15~21%)に減少し、反対は53%(同48~57%)に増加するなど、61%がベースライン調査から回答を変更していた。

 メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)による医療保険給付金の決定に対する回答を見ると、最も効果が期待できそうなAD患者に限定すべきが63%(95%CI 58~68%)、aducanumabの効果を検証する臨床試験の対象者に限定すべきが40%(同36~44%)を占めた。また、回答者の71%(同 66~75%)が家族にAD患者がいれば順番待ちリスト対照(waitlist-style)ランダム化比較試験に、60%(同55~64%)がプラセボ対照ランダム化比較試験に喜んで登録させると回答した。

 aducanumabの販売については、回答者の81%(95%CI 77~85%)が「今後、複数の試験において同薬の効果が示されなければFDAは販売中止にすべき」と回答。50%(95%CI 46~54%)が「効果に見合った価格にすべき」、60%超が「メディケアが同薬に費やす費用を他の必要な受益者に回す方がよい」と回答した。

 さらに健康保険料が月150ドルだったと仮定して、aducanumabのコスト分をカバーする上で許容できる保険料の値上げに関する質問では、37%(95%CI 33~41%)が「許容できない」と回答。回答者の月当たりの値上げ許容額の中央値は1~5ドルだった。

 なお、患者の平均体重が74kgの場合、aducanumabの年間薬剤費は2万8,200ドル(約325万円)となっている(関連記事「来年からaducanumabの卸価格半額に、米国」)。

(編集部)